入居者が退去した後や亡くなった後、室内に残された家財(残置物)を処分するとき、後の争いを防ぐ土台になるのが同意書です。残置物には所有者がいるため、同意のないまま処分すると損害賠償を求められるおそれがあります。
この記事では、同意書に何を書くか、誰から取るか、どう進めるかを管理会社と大家の実務に沿って整理します。あわせて、署名を求める相手が相続人である場合、その署名が相続放棄をできなくする可能性があるという論点を扱います。この点は署名する側だけの問題ではなく、後から同意の効力を争われる大家側のリスクでもあります。
残置物そのものの意味や所有権の基本は残置物とは、撤去費用と負担者は残置物撤去の費用と『誰が払う』で扱っています。
残置物処分の同意書とは
室内に残された家財を処分・保管・売却などの方法で処理することについて、その所有者や責任者から書面で同意を得る文書です。退去者本人、あるいは入居者が亡くなった場合の相続人が同意者になります。
口頭の了承だけで進める例も見られますが、後から「勝手に捨てられた」と言われると水掛け論になります。書面に残すことで、誰が何にどこまで同意したのかを示せます。
同意書・所有権放棄書・死後事務委任の違い
現場では似た書面が混在しています。役割が違うので、場面に応じて選びます。
| 書面 | いつ交わすか | 誰と交わすか | 何を定めるか |
|---|---|---|---|
| 残置物処分の同意書 | 退去後・死亡後 | 退去者本人/相続人 | 残された家財を処分してよいという同意 |
| 所有権放棄書 | 退去後 | 退去者本人 | 残した家財の所有権を放棄する意思 |
| 死後事務委任契約(モデル契約条項) | 入居時・入居中 | 賃借人と受任者 | 死亡後に受任者が契約解除と残置物処理を行う権限 |
所有権放棄書は、退去者本人と連絡が取れる場面で使います。相続が発生している場面では、放棄書ではなく相続人からの同意が必要になります。死後事務委任は事後ではなく事前の備えで、後述します。
なぜ同意書が必要なのか
理由は残置物の所有権にあります。入居者が亡くなった場合、室内の家財の所有権は原則として相続人へ引き継がれます。残された物は大家のものではなく、相続人の財産という扱いになります。
そのため所有者の同意なく処分すると、所有権を持つ相続人に対する不法行為となり、損害賠償の対象になりかねません。
もうひとつ押さえたいのが、権利があっても実力行使で回収してはいけないという考え方です。賃料が滞納されていても、契約が終了していても、大家が自分の判断で鍵を交換したり家財を運び出したりすることは認められません。これは条文で定められたものではなく、裁判例が積み重ねてきた考え方です(自力救済の禁止)。ごく限られた緊急の場面を除き、認められないと理解しておくのが安全です。「退去して連絡もつかないのだから処分してよいはず」という自己判断は、この点で危険です。
同意書は、この構造のなかで所有者の意思を確認し、処分の正当性を書面で担保するための備えです。
署名を求める前に伝えたいこと(相続放棄との関係)
ここが実務で最も見落とされる論点です。
相続人に残置物処分の同意書へ署名してもらう場合、その行為が法定単純承認にあたり、相続放棄ができなくなる可能性があります。民法921条1号は次のように定めています。
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。 一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
室内の家財は相続財産です。その処分に同意する行為が「相続財産の処分」にあたると判断されれば、単純承認したものとみなされ、被相続人に借金があった場合でもそれを引き継ぐことになります。
ただし条文は、保存行為を除外しています。保存行為とは財産の現状を維持するための行為で、腐敗するものの処理や、家財をそのまま保管することはこれにあたると考えられています。したがって、同意書で「保管のみ」を認めるのか「廃棄・売却まで」認めるのかで意味合いは変わります。どこまでが保存行為かの線引きは最終的に個別の判断になるため、範囲を広く取る同意を求めるときほど、事前の専門家確認が要ります。
なぜ大家・管理会社にとっても他人事ではないのか
署名を得れば処分を進められるので、一見すると大家側に有利に見えます。実際には次のリスクを抱えます。
- 後から相続人が「相続放棄できなくなるとは知らなかった」として同意の効力を争う余地を残す
- 相続人がその場では署名を拒み、結局は撤去が長期化する
- 説明のないまま署名を求めたことが、トラブル時に不利な事情として扱われうる
亡くなった方に負債があるかどうかは、遺族自身も当初は把握していないことが多いものです。急かして署名させる進め方は、双方にとって不安定な結果を招きます。
実務での伝え方
署名を求める際は、次の点を口頭と書面の両方で伝えておくと安全です。
- この同意が相続財産の処分にあたる可能性があり、相続放棄を検討しているなら先に専門家へ相談してほしいこと
- 相続を承認するか放棄するかは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に判断する必要があること
- 判断がつかない場合、その場での署名を求めないこと
相続放棄と遺品整理の関係、どこまでなら触れてよいのかの線引きは相続放棄と遺品整理で詳しく扱っています。署名をお願いする前に、この記事を案内する運用にしておくと、後の争いを減らせます。
相続放棄された後も残る保存義務
相続人が放棄した場合、残置物の扱いが自動的に大家へ移るわけではありません。民法940条は、放棄した人が放棄の時点でその財産を現に占有していた場合に、相続人または相続財産の清算人へ引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならないと定めています。2023年4月施行の改正で、義務を負うのが「放棄の時に現に占有している者」に限定されました。
一方で、誰も現に占有していない、あるいは相続人が全員放棄して引き取り手がいない状態が続く場合は、家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てる流れになります。この手続きには申立費用と予納金がかかり、期間も要します。事前の備えが効いてくるのはこの局面です。
誰から同意を得るか
立場によって、同意の意味が変わります。
| 相手 | 位置づけ | 同意の効力 |
|---|---|---|
| 退去者本人 | 残置物の所有者 | 所有者本人の同意として有効に働く |
| 相続人 | 所有権を承継した人 | 有効。ただし前述の相続放棄への影響を伝える |
| 連帯保証人 | 債務の保証人 | 家財の所有者ではないため、所有権の問題は解決しない |
| 緊急連絡先 | 連絡の窓口 | 処分に同意する権限は原則としてない |
連帯保証人と緊急連絡先を所有者と同列に扱わないことが重要です。連帯保証人から「処分してよい」と言われても、それは債務の話であって、相続人の所有権を消すものではありません。
相続人が複数いる場合、誰か一人の同意で足りるとは限りません。相続財産は相続人の共有になるため、全員の意思を確認するのが原則です。連絡が取れない相続人がいる場合の進め方は、個別に専門家へ相談してください。
同意書に記載すべき項目
対象と同意者、処分の範囲、費用負担をそろえて書きます。
| 区分 | 記載する内容 |
|---|---|
| 対象物件 | 物件名・所在地・部屋番号、賃借人(被相続人)氏名 |
| 同意者 | 氏名、賃借人との関係(相続人・退去者本人など)、住所、連絡先 |
| 同意の範囲 | 搬出・処分・売却・保管のうち認める方法 |
| 除外する物 | 引き渡しを希望する品(位牌・アルバム・貴金属など)があれば明記 |
| 貴重品の扱い | 現金・有価証券・貴金属が出た場合に引き渡すか売却して充当するか |
| 費用負担 | 処理費用を誰がどの範囲で負担するか |
| 保管期間 | 引き取りがない場合に処分してよいまでの期間 |
| 免責 | 同意の範囲で処分したことについて責任を問わない旨 |
| 相続放棄への注意 | この同意が相続財産の処分にあたる可能性がある旨の確認欄 |
| 署名 | 日付と同意者の署名・押印 |
貴重品や有価物が出たときの扱いは、後の争いになりやすい部分です。あいまいにせず先に決めておきます。
最後の「相続放棄への注意」を欄として設けておくと、説明した事実が書面に残ります。署名を求める側の保護にもなります。
書面は2通作成し、双方が1通ずつ保管する運用が一般的です。
遠方の相続人と取り交わすとき
相続人が遠方に住んでいて来訪が難しい場合、郵送でやり取りすることになります。返送が滞って撤去が進まないのはよくある事態です。
送付するときは、記入例と返信用封筒を同封し、どこに何を書けばよいかを一目で分かるようにしておきます。あわせて、署名が相続放棄の可否に影響しうる点と、判断に時間をかけて構わない旨を書面で添えます。この一文があるかどうかで、後から効力を争われる可能性が変わります。
電子的な方法で取り交わす場合も、本人が内容を理解したうえで署名したと示せる形にしておきます。メール本文で「了解しました」と返信をもらうだけの運用は、同意の範囲があいまいになりやすく、避けたほうが無難です。少なくとも同意書の内容が特定できる形(PDFの添付と、その内容に同意する旨の明示)にしておきます。
処分までの実務の流れ
同意書は単独で機能するものではなく、通知と保管の手続きとセットで意味を持ちます。
- 契約の状態を確認する(解約、期間満了)。賃借人が亡くなった場合、賃借権は相続人に承継されるため契約は自動では終了しません。 相続人との合意解除か、相続人が不明なら相続財産清算人との協議で解除する必要があります
- 相続人や関係者を調査し、連絡を試みる
- 室内の状況を記録する(写真・動画・目録)
- 同意書を交わす、または引き取りの意思を確認する
- 一定期間保管する
- 同意の範囲で処分する
記録は後から効いてきます。何がどれだけ残っていたか、貴重品はあったか、いつ通知したかを残しておくことで、争いになったときに説明できます。撤去前の写真は部屋全体と、価値のありそうな品を個別に撮っておきます。
保管期間について法律上の一律の定めはありません。実務では数か月程度を目安に置く例が見られますが、事案によって適切な長さは変わります。同意書に期間を明記し、その期間が過ぎたら処分できるという合意にしておく方法が確実です。
記録の残し方
争いになったときに効くのは、当時の状況を再現できる記録です。次の粒度で残しておきます。
| 対象 | 残し方 |
|---|---|
| 部屋全体 | 各部屋を入口から俯瞰で撮影。日付が写る設定にしておく |
| 収納の中 | 押し入れ・クローゼット・食器棚を開けた状態で撮影 |
| 価値のありそうな品 | 個別に撮影し、型番やブランドが読める角度も残す |
| 貴重品 | 現金・通帳・印鑑・貴金属は発見時点で個別に記録し、保管場所を明示 |
| 通知 | いつ誰にどの方法で連絡したかを日付つきで記録。郵送は配達記録を保存 |
| 目録 | 主要な品目と数量を一覧化。同意書に添付すると範囲が明確になる |
目録まで作るのは手間ですが、「同意した範囲を超えて捨てられた」という主張に対して、同意時点で何があったかを示せる唯一の材料になります。撤去業者に依頼する場合は、作業前の撮影と目録作成を作業範囲に含められるか確認しておくと負担が減ります。
貴重品が出てきたときの扱い
作業中に現金や通帳、貴金属が見つかることは珍しくありません。同意書で「処分してよい」と合意していても、これらを他の家財と同じ扱いにするのは避けます。
発見時点で作業を止め、写真と目録に記録し、同意者へ連絡して引き渡すか、事前に取り決めた方法で処理します。相続が発生している場面では、現金や預貯金は相続財産そのものです。大家や管理会社の判断で費用へ充当すると、後から精算を求められる余地を残します。
同意が得られないときの選択肢
相続人が見つからない、連絡がつかない、全員が放棄した、意見が割れている。こうした場面では同意書では進められません。
| 状況 | 検討する手続き |
|---|---|
| 相続人が全員放棄・不存在 | 家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てる |
| 相続人はいるが応じない | 明渡しの訴訟・強制執行 |
| 相続人が不明 | 相続人調査(戸籍収集)を経て上記いずれか |
いずれも時間と費用がかかります。だからこそ、入居の段階で備えておく方法に価値があります。
相続財産清算人の選任は、書類がそろっていれば申立てから数週間から数か月程度が目安です。居室の明渡しや残置物の処理は、清算人が選任された後にその清算人と協議して進められます。清算そのものは権利主張の公告期間を経るため完了までに年単位を要することがありますが、大家が待つ必要があるのは選任までであって、清算の完了までではありません。
申立てには収入印紙と官報公告費用がかかります。相続財産に見合う費用が見込めない場合は、清算人の報酬を含む管理費用にあてる予納金の納付を求められることがあります。残置物しか残っていない事案では実際に求められることが多いといえます。金額は事案と裁判所によって異なるため、申立てを検討する段階で管轄の家庭裁判所へ確認してください。
それでも選任までの間、部屋は貸せません。「同意書が取れないなら清算人を立てればよい」と単純に構えるのではなく、そこに至る前にどれだけ手を尽くせるかが実務上の分かれ目になります。
相続人調査をどこまでやるか
連絡先が分からない場合、被相続人の戸籍をたどって相続人を特定する作業が必要になります。出生から死亡までの戸籍を集め、配偶者・子・親・兄弟姉妹という順で範囲を確定していく流れです。
自力で進めることもできますが、転籍が多い場合や兄弟姉妹まで範囲が広がる場合は時間がかかります。司法書士や弁護士へ依頼すると、職務上請求により収集できるため実務的です。撤去を急ぐ事情がある場合は、調査と並行して現状保全(施錠管理・写真記録)を進めておきます。
生前・入居時に備える方法
国土交通省と法務省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しています。単身高齢者が亡くなった際に、あらかじめ定めた受任者が賃貸借契約の解除と残置物の処理を進められるようにする枠組みです。使用が法令で義務づけられているものではなく、利用は任意です。
そのまま使える契約書式のほか、活用ガイドブックが公開されています。ガイドブックは令和7年10月に第2版が出ています。制度の中身は残置物の処理等に関するモデル契約条項で解説しています。
事後の同意書は「起きてしまった後にどう収めるか」の手段で、モデル契約条項は「起きる前に決めておく」手段です。単身高齢者の入居を受け入れる物件では、後者を先に整えておくほうが結果的に負担が軽くなります。
同意書とモデル契約条項の使い分け
どちらを使うかは、時点と相手で決まります。
| 残置物処分の同意書 | モデル契約条項(死後事務委任) | |
|---|---|---|
| 交わす時点 | 退去後・死亡後 | 入居時・入居中 |
| 相手 | 退去者本人・相続人 | 賃借人と受任者 |
| 相続人の協力 | 必要 | 事前に定めた受任者が対応するため直接は不要 |
| 相続人が不明・非協力のとき | 使えない | 受任者を通じて進められる |
| 相続放棄への影響 | 署名者に生じうる | 相続人が事後に署名を求められる場面は生じない。ただし下記の注意あり |
| 導入の手間 | 事後に1枚 | 入居時に契約を組む必要がある |
すでに空室で残置物が残っている物件には同意書しか使えません。一方、これから単身高齢者を受け入れる物件では、入居時にモデル契約条項の枠組みを組んでおくと、事後の同意取得そのものが不要になります。
受任者を誰にするかで、論点は消えない
ここは誤解しやすい部分です。モデル契約条項の解説は、解除関係事務委任契約の受任者について次のように述べています。
解除関係事務委任契約の受任者はまずは賃借人の推定相続人のいずれかとするのが望ましく,その上で,推定相続人の所在が明らかでない,又は推定相続人に受任する意思がないなど推定相続人を受任者とすることが困難な場合には,居住支援法人や居住支援を行う社会福祉法人のような第三者を受任者とするのが望ましいと考えられる。
つまり公式が第一候補として想定しているのは、第三者ではなく推定相続人です。賃貸人自身を受任者にすることは避けるべきとされています。
推定相続人が受任者になった場合、その人は賃借人の死亡後に残置物を廃棄したり換価したりします。この行為を法定単純承認との関係でどう評価するかについて、モデル契約条項の本体にも活用ガイドブックにも記載がありません(いずれも「相続放棄」「単純承認」の語が出てきません)。国が論点を解決したわけではなく、触れていないと理解しておくのが正確です。
推定相続人を受任者に立てるときは、この点を事前に弁護士や司法書士へ確認してください。
保管期間の目安として使える
モデル契約条項は、受任者が残置物を廃棄できる時期について「委任者の死亡から3か月が経過し、かつ賃貸借契約が終了したとき」と定め、解説で「3か月を下回る期間を定めることは避けるべきである」としています。
この3か月は、事後の同意書で保管期間を決めるときの目安にもなります。法律上の一律の定めがない領域なので、公的な資料が置いている水準に合わせておくと説明しやすくなります。
適用範囲に注意
想定されているのは、単身高齢者が賃貸住宅を借りる場面です。国土交通省は、残置物処理に関する賃貸人の不安が生じにくい場面でこの枠組みを使うと、民法や消費者契約法に違反して無効となる場合があるとしています。全入居者へ一律に導入する運用は避けてください。
既に入居中の方へ導入する場合、既存の賃貸借契約の変更について本人の合意が必要になります。制度の詳細は残置物の処理等に関するモデル契約条項で扱っています。
署名を求められた側(相続人)の方へ
この記事は管理会社と大家の実務を中心に書いていますが、同意書を差し出された側にも読んでいただきたい部分があります。
すぐに署名しなくてよい
管理会社から「早く片づけたいので署名してください」と言われても、その場で決める義務はありません。前述のとおり、この署名は相続財産の処分にあたると判断される可能性があり、後から相続放棄をしたくてもできなくなる場合があります。
亡くなった方に借金や連帯保証債務があるかどうかは、時間が経ってから判明することもあります。故人の郵便物やカード明細、通帳の引き落としを確認するまでは、負債がないと言い切れません。
判断の期限は3か月
相続を承認するか放棄するかは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に決める必要があります。この期間内であれば、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられる場合もあります。
「3か月あるので、その間に調べてから返答します」と伝えれば足ります。管理会社側も、後から効力を争われるより、待ってから確実な同意を得るほうが安全です。
相談先
判断に迷う場合、司法書士や弁護士へ相談してください。相続放棄の相談は初回無料としている事務所もあります。収入や資産の状況によっては、日本司法支援センター(法テラス)の費用立替えの制度を使える場合があるので、費用面が不安なときは利用の可否を問い合わせてみてください。
何にどう触れると相続放棄に影響するのか、形見分けはどこまで許されるのかは相続放棄と遺品整理で整理しています。
現場でよくある3つのつまずき
同意書そのものより、その前後で止まる例が多く見られます。
「連帯保証人がいるから大丈夫」で進めてしまう
最も多い誤解です。連帯保証人は賃料や原状回復費用といった債務を保証する立場であり、室内の家財の所有者ではありません。保証人から「処分してください」と言われても、相続人の所有権はそのまま残ります。
保証人へ費用を請求することと、家財を処分してよいかは別の話として整理します。同意書は所有者から、費用は保証契約にもとづいて、と分けて考えます。
孤独死の現場で、片付けと同意取得の順序が逆になる
特殊清掃が必要な状況では、臭気や害虫の問題から一刻も早く着手したくなります。ただし清掃と残置物の処分は分けて考えられます。
生活環境の保全に必要な範囲の消毒や汚損部分の除去と、家財を運び出して捨てる行為は性質が違います。前者を急ぎつつ、後者は同意を得てから着手する。この線引きを業者と共有しておかないと、同意前に一式撤去されてしまいます。
依頼時に「同意が取れるまでは搬出しない」「貴重品が出たら作業を止めて連絡する」を作業条件として明示しておきます。
相続人に急かして署名させてしまう
原状回復を進めたい事情はありますが、前述のとおり署名は相続放棄の可否に影響しうる行為です。葬儀の直後で、負債の有無も把握できていない段階の遺族に、その場での署名を求めるのは避けます。
「期限までに署名がなければ処分します」という通知だけを一方的に送る運用も、後から効力を争われる余地を残します。説明したうえで判断の時間を渡すほうが、結果的に早く片づきます。
雛形について
残置物処分同意書の雛形は現在準備中です。記載項目は上の表にすべて挙げているので、それまでは自社の書式に反映してご利用ください。
雛形を用意する場合も、一般的な参考様式にとどまります。個別の事情によって必要な手当ては変わるため、重要な案件では弁護士や司法書士に内容を確認してから使うことをおすすめします。
使用上の注意
同意書は万能ではありません。相続放棄が見込まれるケース、相続人が複数いて意見が割れるケース、相続人が見つからないケースでは、別の手続きが必要になります。連帯保証人の責任がどこまで及ぶかも契約内容によって変わります。
判断に迷う場合は自己判断で処分を進めず、弁護士や司法書士へ相談してください。この記事と雛形は一般的な参考情報であり、個別の法律相談に代わるものではありません。
残置物の撤去・特殊清掃をご相談したい管理会社・大家の方へ
残置物の撤去・特殊清掃・原状回復についてご相談いただけます。作業前の写真記録や目録の作成、貴重品が出た場合の取り扱いなど、作業面の進め方もあわせてご相談ください。
相続人への説明の要否や、同意が得られない場合にどの手続きを選ぶかといった法律上の判断については、弁護士・司法書士へご相談ください。ご相談は info@ihin-seiri-pro.jp までご連絡ください。



