入居者の退去後や死亡後に室内へ残された家財(残置物)の撤去では、2つの疑問がよく生じます。費用はいくらかかるのか、そしてその費用は誰が払うのか。
結論から言えば、費用負担は原則として残置物の所有者、つまり退去者本人か相続人に及びます。 ただし相続放棄などの事情があると、結果として大家が負担せざるを得ない場面も出てきます。
この記事では、一般的な目安に加えて、孤独死保険の支払実績から集計された損害額の統計も使って相場を整理します。業界各社の目安だけでは分からない、実務の金額感を掴めるはずです。
残置物そのものの意味や所有権の基本は残置物とはで解説しています。
残置物撤去の費用相場
まず間取り別の目安です。実際は現地見積もりで確定しますが、予算を考える出発点になります。
| 区分 | 費用の目安 |
|---|---|
| ワンルーム・1K | 30,000〜100,000円 |
| 1LDK〜2LDK | 70,000〜300,000円 |
| 3LDK〜一軒家 | 170,000〜600,000円 |
幅が広いのは、同じ間取りでも物量が2〜3倍違うことがあるためです。ワンルームでも床が見えない状態なら、2LDKの標準的な部屋より高くなります。
物量が少ない例
物量が多い例
この目安は業界各社の公開相場によるもので、公的な料金統計ではありません。公的な調査としては、総務省行政評価局が実際の見積書75件を集計した結果を公表しており、10万円から40万円の間の取引が多いという傾向が示されています。同報告書は国民生活センターの分析も引いており、契約金額の平均が約42万円、実際に支払われた金額の平均が約30万円とされています。ただし報告書自身が、これは統計手法で得たものではなく実績値と考えるべきではない、と注記しています。
賃貸で入居者が亡くなった場合の実データ
賃貸物件で入居者が亡くなったケースについては、保険会社が集計した損害額と支払保険金という一次統計があります。日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会の「第10回 孤独死現状レポート」(2025年12月公表)です。孤独死保険の支払い実績を集計したもので、2015年4月から2025年3月までのデータが対象です。
| 項目 | 平均損害額 | 平均支払保険金 | 最大損害額 |
|---|---|---|---|
| 遺品整理(残置物処理)費用 | 294,131円 | 293,360円 | 4,253,473円 |
| 原状回復費用 | 494,344円 | 315,510円 | 7,564,673円 |
| 家賃保証 | 損害額の集計なし | 337,035円 | 公表なし |
見方を2つに分けます。損害額は実際にかかった費用、支払保険金は保険で戻った額です。レポート自身が「孤独死が発生した場合の平均損害額は、100万円を超える高額となり、家主の負担は大きい」と述べています。3項目を合わせるとその水準になります。
注目したいのは2点です。
ひとつは幅です。残置物処理の平均は約29万円ですが、最大は425万円。平均から14倍離れた事案が実在します。 予算を平均だけで組むと足りなくなることがあります。
もうひとつは原状回復の差です。平均損害額49万円に対して平均支払保険金は31万円で、約18万円は保険でカバーされていません。 保険に入っていても原状回復の全額が戻るとは限らない、という前提で考えてください。
もうひとつ、直近の傾向も出ています。同レポートは累積データと単年データを分けて示しており、単年では次のようになっています。
| 項目 | 累積 | 単年 |
|---|---|---|
| 遺品整理(残置物処理)費用 | 294,131円 | 266,265円 |
| 原状回復費用 | 494,344円 | 610,507円 |
| 家賃保証 | 337,035円 | 389,706円 |
残置物処理そのものは横ばいですが、原状回復は単年で61万円まで上がっています。 レポートは物価高騰による材料・工費の影響と説明しています。家賃保証も上がっており、こちらは家賃相場の上昇が影響しているとされています。
残置物の撤去だけを見て予算を組むと、その後の原状回復で想定を超えることがある、という点は押さえておいてください。
このデータをどう読むか
数字を使う前に、母集団を確認しておきます。このレポートが定義する孤独死は「賃貸住宅居室内で死亡した事実が死後判明に至った1人暮らしの人の死」です。つまり一人暮らしで、居室内で亡くなり、死後に発見されたケースに限られます。持ち家の居住者は含まれず、病院で看取られた場合や同居人がいる世帯も対象外です。
したがって、この金額感が当てはまるのは孤独死の事案です。通常の死亡退去や、生きている入居者が家財を置いて退去したケースには当てはまりません。 そちらは特殊清掃も長期の汚損も生じないため、金額はもっと低くなります。
なお費用の集計は標本数が公表されておらず、異常値を除外した値である点も押さえておいてください(男女比・年齢の集計は12,105人、発見日数は9,249件と、表ごとに母数が異なります)。
もうひとつ、レポートが示す事実として、孤独死は高齢者だけの問題ではありません。累積データでは死亡時の平均年齢が63.6歳、65歳未満のいわゆる現役世代が46.1% を占めます。男女比は男性83.3%・女性16.7%です。
ただし2024年度の単年データでは平均年齢67.4歳、現役世代の割合は35.6%で、累積より10.5ポイント低くなっています。レポート自身がこの乖離を注視対象として挙げているので、傾向として断定はできません。
高齢者の入居だけを警戒していると、実際の発生源を見落とすことになります。管理会社の立場では、年齢で線を引くより、連絡が取れているかどうかで見るほうが実態に合っています。
費用が決まる仕組み
金額の内訳を知っておくと、見積書を読めるようになります。残置物撤去の費用は、おおむね次の要素の合計です。
人件費は作業員の人数と時間、車両費はトラックの台数で決まります。処分費は重量または容積で計算されるのが一般的です。
このうち読者が見積もり前に減らせるのは物量だけです。搬出の条件(階段しかない、道が狭い)は変えられません。だからこそ、見積もりを取る前に「残す物」を絞っておくと効きます。
高くなる要因
同じ間取りでも金額が跳ね上がるのは、次のような条件が重なるときです。
| 要因 | なぜ上がるか |
|---|---|
| 物量が多い | トラックの台数と作業員が増える。ゴミ屋敷状態では数倍になる |
| エレベーターがない | 階段での搬出は時間がかかり、人員も増える |
| 建物前にトラックを付けられない | 台車での横持ちが発生する。距離があるほど時間がかかる |
| 家電4品目がある | リサイクル料金と収集運搬料金が別途かかる |
| 特殊清掃が必要 | 消臭・汚損処理が加わる。範囲が広いと解体をともなう |
| 作業日を指定する | 即日・夜間・休日は割増になることがある |
| 貴重品の捜索を依頼する | 一つひとつ確認しながらの作業になり、時間が延びる |
このうち影響が大きいのは物量と特殊清掃です。孤独死保険のデータで残置物処理の最大が425万円に達しているのは、この2つが重なった事案と考えられます。
発見までの日数が費用を左右する
賃貸物件では、発見の早さが費用に直結します。同じレポートによると、発見までの平均日数は19日です。内訳は次のとおりです。
| 発見までの日数 | 割合(全体) |
|---|---|
| 3日以内 | 37.0% |
| 4〜14日 | 28.3% |
| 15〜29日 | 15.4% |
| 30〜89日 | 15.8% |
| 90日以上 | 3.5% |
レポートは発見日数と費用を結びつけたデータを公表していませんが、実務上は日数が経つほど汚損が建材に及び、原状回復の範囲が広がります。3日以内に見つかれば特殊清掃が不要なことも多く、費用は残置物の撤去だけで収まります。
同レポートは、福祉関係者や配達員が第一発見者となったケースで3日以内の発見が51.5%と高いことも示しています。定期的な訪問がある入居者ほど早く見つかる、という関係です。管理会社の立場では、見守りサービスや定期連絡の仕組みが、そのまま費用リスクの低減につながります。
費用は誰が払うのか
ここからが法的な整理です。出発点は、残置物の所有権が誰にあるかにあります。
入居者が亡くなった場合、室内の家財は相続財産として相続人に引き継がれるのが原則です。その処理や費用も相続人に帰属するのが基本になります。
連帯保証人に請求できるか
契約によります。連帯保証の範囲に原状回復や残置物撤去にかかる債務が含まれていれば、請求できることがあります。ただし個人が保証人の場合、確認すべき点が2つあります。
極度額の定めがあるか
2020年4月の民法改正で、個人が保証人になる根保証契約には極度額(上限額)が必要になりました。
個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。(民法465条の2第2項)
判断の分かれ目は、賃貸借契約ではなく保証契約がいつ結ばれたかです。国土交通省の標準契約書Q&Aは次のように整理しています。
- 施行前に結んだ保証契約は、施行後に初めて合意更新されるまで、極度額の定めがなくても有効
- 賃貸借契約の更新にあわせて保証契約も合意更新した場合や、新たに保証契約を結んだ場合は、改正後の規定が適用される
つまり「更新したから無効」ではありません。法定更新で保証について新たな合意がなければ、施行前の保証は有効なままです。逆に合意更新した場合は極度額が必要です。
極度額が定められている場合、その金額が上限になります。滞納家賃が先に発生していれば、その分だけ枠が減ります。残置物撤去と原状回復を合わせて極度額を超えた分は、保証人からは回収できません(相続人に対する債権は残ります)。
なお、保証人が家賃債務保証会社などの法人であれば、この規定の対象外です。
入居者の死亡で保証の元本が確定する
もうひとつ、死亡のケースに固有の論点があります。民法465条の4第1項3号は、主たる債務者が死亡したときに個人根保証契約の元本が確定すると定めています。
つまり、入居者が亡くなった時点で保証の範囲が締め切られます。 その後に発生した費用が保証の対象に入るかは、それが死亡時点までに生じた債務といえるかによります。
残置物撤去や原状回復の費用は、作業をするのは死亡後です。これらが保証の範囲に入るかは、借主の債務としていつ発生したと見るかにかかり、個別の判断になります。国土交通省のQ&Aも、居室の損害について善管注意義務違反を理由に借主が損害賠償債務を負う可能性があり、その場合は主債務の元本に含まれる可能性がある、という書き方をしています。
保証人への請求を前提に予算を組むときは、この点を弁護士に確認しておくほうが確実です。
相続放棄された場合
相続人が全員放棄すると、費用の引き受け手がいなくなります。ここで大家が自分で処分してよいことにはなりません。所有権と手続きの問題は別に効いてきます。
進め方としては、家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てることになります。申立てには収入印紙と官報公告費用がかかり、相続財産に見合う費用が見込めない場合は予納金の納付を求められることがあります。
つまり、回収できないだけでなく、手続きのために追加で費用が出ていくという構造です。相続放棄が見込まれる事案では、この点を織り込んで判断してください。
遺族・相続人の側から見た「相続放棄するとき遺品をどう扱うか」は相続放棄と遺品整理で扱っています。
請求はどの順で当たるか
実務では次の順に確認します。どこで止まるかで、最終的な負担者が決まります。
- 相続人がいるか(戸籍で確認する)
- 相続人が費用を負担する意思があるか
- 相続放棄をしていないか(3か月の熟慮期間内かも確認)
- 連帯保証人がいるか。保証の範囲に含まれるか。極度額はいくらか
- 孤独死保険に加入しているか
1〜3で止まれば相続人、4で止まれば連帯保証人、いずれも当たらなければ大家の負担です。5の保険は、負担者が誰であるかとは別に、実際の出費を補う仕組みとして働きます。
注意したいのは、相続人が費用を負担すると言っても、放棄の可能性が消えるわけではないことです。熟慮期間は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月なので、その間に判断が変わることもあります。口頭の約束だけで作業を進めず、書面で合意しておいてください。
通常の退去で残された場合
亡くなったケースだけでなく、退去者が家財を置いていった場合も費用の問題が生じます。こちらは請求先が明確な分、進めやすい面があります。
原則として、置いていった本人が負担します。連絡が取れるなら、撤去費用の見積もりを伝えたうえで負担してもらうか、敷金から差し引く形で合意します。
敷金から差し引く場合、民法622条の2は、賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたときに、賃借人の債務額を控除した残額を返還すると定めています。撤去費用がその債務にあたるかは、契約の内容と個別の事情によります。差し引くなら、金額の根拠(見積書)を示して合意しておくほうが後の争いを避けられます。
問題は連絡が取れない場合です。契約書に所有権放棄の条項があっても、それだけで処分してよいことにはなりません。通知を試みた記録を残し、一定期間保管したうえで判断することになります。この保管期間中も部屋は貸せないので、時間そのものが損失になります。
入居時に備える方法
事後に回収できないなら、入居の段階で備えるほうが確実です。手段は2つあります。
ひとつは孤独死保険です。大家型と入居者型があり、補償の中身と受け取る人が違います。
| 大家型 | 入居者型 | |
|---|---|---|
| 契約者・被保険者 | 家主・管理会社 | 入居者(保険金は相続人へ) |
| 補償 | 遺品整理・原状回復・家賃損失 | 遺品整理・原状回復(家賃損失はなし) |
| 保険料の目安 | 1部屋あたり月額数百円程度 | 2年間で20,000円程度 |
大家・管理会社として備えるなら大家型です。入居者型は被保険者が入居者なので、保険金は大家ではなく相続人に支払われます。なお補償内容・加入単位・保険料は商品や取扱会社によって異なります。
もうひとつは、国が策定した残置物の処理等に関するモデル契約条項です。こちらは費用を補償するものではなく、契約解除と残置物処理を進められるようにする仕組みです。詳しくは残置物の処理等に関するモデル契約条項で扱っています。
費用の補償と手続きの確保は別の話なので、両方を検討する価値があります。
見えにくい費用「部屋が貸せない期間」
見積書に出てこない負担があります。手続きが終わるまで部屋を貸せない期間の家賃です。
孤独死保険のデータでは、家賃保証の平均支払額が337,035円、単年では389,706円でした。これは保険で補償された分の金額なので、補償がなければそのまま大家の減収になります。
金額の感覚をつかむために分解すると、家賃8万円の部屋なら4か月分に相当します。残置物の撤去だけなら数週間で終わりますが、相続人が見つからない、全員が放棄した、といった事案では清算人の選任を待つことになり、月単位で止まります。
つまり実質的な負担は「撤去費用+原状回復費用+止まっている期間の家賃」です。撤去を急ぐか、手続きを丁寧に踏むかを判断するとき、この3つ目を勘定に入れてください。
ただし、時間を惜しんで無断で処分すると損害賠償のリスクを負います。急いで進めた結果、撤去費用より大きい賠償を求められては本末転倒です。手続きを短縮したいなら、入居の段階でモデル契約条項を結んでおくほうが確実です。
無断で処分するとどうなるか
費用を抑えたいからといって、所有者の同意を得ないまま処分するのは避けてください。
所有権が相続人などにある以上、無断処分は不法行為となり、損害賠償を求められるおそれがあります。 さらに、権利があっても実力行使で回収してはいけないという考え方(自力救済の禁止)もあり、こちらは所有権の問題とは別に効きます。
適法に進めるには、相続人や連帯保証人から残置物の処分について書面で同意を得るのが基本です。書面の作り方と記載項目は残置物処分の同意書で扱っています。相続人に署名を求める場合、その署名が相続放棄を閉ざしうるという論点もあるので、あわせて確認してください。
費用を抑える方法
適法な範囲でできることを整理します。
| 方法 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 買取で相殺する | 家電・家具・貴金属などに値がつけば差し引かれる | 買取には古物商許可が必要。許可の有無を確認 |
| 残す物を事前に絞る | 物量が減り、トラック台数と人員が減る | 形見分けの希望は先に聞いておく |
| 自治体の粗大ごみ収集を併用する | 大型家具を自治体ルートに回せば処分費が下がる | 搬出は自分で行う必要がある。日程の調整も要る |
| 家電4品目を別ルートにする | 購入店や自治体の窓口を使う | 購入店が分からない場合は自治体に相談 |
| 作業日を業者の都合に合わせる | 即日・休日の割増を避けられる | 明渡し期限との兼ね合いで判断 |
| 複数社から見積もりを取る | 内訳を比較できる | 極端に安い見積もりは処理経路を確認 |
このうち効果が大きいのは物量を減らすことです。トラック1台分の差がそのまま金額に出ます。
やってはいけないのは、安さだけで業者を選ぶことです。処分費は本来かかるものなので、極端に安い見積もりには理由があります。買取で相殺しているなら古物商許可が、自社で処理施設を持つなら施設名が答えられるはずです。どちらの説明もないまま安い場合は、処理経路を確認してください。
許可の種類と確認のしかたは遺品整理・不用品回収の許可で条文とあわせて整理しています。
見積書の読み方
複数社から見積もりを取ると、総額だけでは比較できないことに気づきます。同じ作業でも項目の立て方が違うためです。次の観点で並べ直すと比較できます。
| 見るところ | 確認の仕方 |
|---|---|
| 処分費の単位 | 重量(kg)か容積(㎥)かトラック台数か。単位が違うと総額だけでは比べられない |
| 人件費の算出 | 人数×時間か、一式か。一式の場合、超過したときの扱いを聞く |
| 家電4品目 | 総額に含まれるか、別途か。リサイクル料金と収集運搬料金の両方が要る |
| 買取の扱い | 見積総額から差し引かれているか、後日精算か |
| 特殊清掃 | 含まれるか別途か。範囲(どこまで)が書かれているか |
| 追加が出る条件 | 当日に増える余地があるか。あるなら上限を確認 |
とくに注意したいのが「一式」です。作業範囲が明確なら問題ありませんが、範囲を書かずに一式とだけある見積もりは、当日に「これは範囲外です」と言われる余地を残します。
相見積もりで金額が大きく違うとき
同じ物量で見積もりが2倍違うことがあります。理由は主に3つです。
処分の経路が違う場合。自社で処理施設を持つ業者と、外部に委託する業者では処分費が変わります。これは正当な差です。
買取を織り込んでいる場合。価値のある物を買い取って総額から差し引いていれば安くなります。この場合は古物商許可があるはずなので、番号を確認してください。
処分費を負担していない場合。これが問題です。回収した物を適正に処理するには費用がかかるので、極端に安い理由が前の2つで説明できないなら、処理経路を確認してください。
自分で処分する場合との比較
費用を抑える手段として、自分で片付ける選択もあります。実際にどこまで現実的かを整理します。
| 自分で処分 | 業者に依頼 | |
|---|---|---|
| 費用 | 自治体の粗大ごみ手数料のみ(1点数百〜数千円) | 間取りに応じた一式費用 |
| 期間 | 収集日の予約が要る。品目が多いと数週間かかる | 半日〜2日程度 |
| 手間 | 搬出・分別・予約をすべて自分で行う | 立ち会いのみ、または立ち会いなしも可 |
| 向いている場面 | 物量が少ない、時間に余裕がある、階段でない | 物量が多い、期限がある、特殊清掃が要る |
| 向かない場面 | 大型家具が多い、エレベーターがない、遠方に住んでいる | 数点だけの処分 |
現実的な判断の分かれ目は物量と期限です。ワンルームで家具が数点なら、自治体の粗大ごみ収集で足ります。一方、明渡しの期限が決まっている、遠方に住んでいる、といった条件があると、自分で運ぶのは難しくなります。
併用も可能です。大型家具だけ自治体の収集に出し、細かい物と搬出を業者に任せる形にすれば、処分費を抑えつつ日程も守れます。見積もりの段階で「この家具は自分で自治体に出します」と伝えれば、その分を除いた金額を出してもらえます。
なお、賃貸で入居者が亡くなったケースでは、自分で処分する選択自体が取りにくくなります。相続人の同意が要る、汚損があると特殊清掃が先に必要、といった制約が重なるためです。
特殊清掃が必要な場合
孤独死などで室内の汚損が生じている場合は、残置物撤去の前に特殊清掃が必要になります。
順序が重要です。汚損した状態のまま家財を運び出すと、共用部や搬出経路に臭気が移り、他の入居者からの苦情につながることがあります。先に特殊清掃を行い、その後で搬出するのが基本です。
床材の下や壁の内部まで及んでいる場合は、解体をともなう原状回復が必要になります。範囲によって金額が大きく変わるので、早い段階で現地を見てもらい、範囲を確定させるほうが結果的に安く収まります。
予算をどう見積もるか
ここまでの内容を、実際に予算を組むときの手順にまとめます。
賃貸で入居者が亡くなったケースでは、次の3つを足して考えます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 残置物の撤去 | 間取り別の目安(ワンルーム3〜10万円ほか)、または保険データの平均29万円 |
| 原状回復 | 保険データの平均49万円。単年では61万円 |
| 貸せない期間の家賃 | 手続きにかかる月数 × 家賃 |
保険データの平均損害額を使うと、撤去と原状回復で約79万円。家賃保証まで含めるとレポートの言う「100万円を超える」水準になります。ただしこれは孤独死の事案の平均であり、発見が遅れたケースを含みます。 3日以内に見つかった事案ならもっと低く収まります。
通常の退去で家財が残された場合は、原状回復と空室期間の考え方は同じですが、撤去そのものは間取り別の目安で足ります。特殊清掃が不要な分、金額は下がります。
予算の幅を持たせるなら、平均ではなく現地を見てもらった見積もりを基準にし、追加が出る条件を確認しておくほうが確実です。平均値は方針を決めるための目安であって、個別の事案の金額ではありません。
見積もりで確認すること
残置物撤去や遺品整理をめぐっては、見積もりと最終請求の差や、当日の予定外の追加請求といった相談が消費生活の相談窓口に寄せられています。次の4点を確認してください。
| 確認項目 | 具体的に聞くこと |
|---|---|
| 作業範囲と内訳 | 何をどこまで行うか、処分費・人件費・車両費の内訳を書面で出せるか |
| 追加料金の条件 | どういう場合にいくら追加になるか。当日の判断で増える余地はあるか |
| 家電4品目の扱い | エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機をどう処理するか。リサイクル料金は含まれるか |
| 許可の有無 | 物件のある市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可番号。買取があれば古物商許可も |
書面が出せない、内訳を示せない、許可番号を答えられない。このいずれかに当たったら、その時点で候補から外して構いません。
追加料金が出やすい場面は追加料金が発生するケースで、費用全体の考え方は遺品整理の費用相場で扱っています。
残置物撤去・特殊清掃をワンストップで相談したい管理会社・大家の方へ
費用負担の整理や同意書の取り交わしは、手順を誤ると後日のトラブルにつながります。残置物撤去から特殊清掃、原状回復までをまとめてご相談いただけます。
お見積もりでは、作業範囲と処分の経路、料金の内訳をご説明します。作業前の写真記録や目録の作成、貴重品が出た場合の取り扱いもあわせてご相談ください。費用負担の請求先や同意の取り方といった法律上の判断については、弁護士・司法書士へご相談ください。ご相談は info@ihin-seiri-pro.jp までご連絡ください。
出典(6件)
- 日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会「第10回 孤独死現状レポート」(2025年12月公表)https://www.shougakutanki.jp/general/info/kodokushi/(2026-08-06確認。対象期間2015年4月〜2025年3月。遺品整理(残置物処理)費用 平均損害額294,131円・平均支払保険金293,360円・最大損害額4,253,473円、原状回復費用 平均損害額494,344円・平均支払保険金315,510円・最大損害額7,564,673円、家賃保証 平均支払い額337,035円(損害額・最大額の公表なし)。2024年度単年は遺品整理266,265円・原状回復610,507円・家賃保証389,706円。発見までの平均日数19日、3日以内37.0%)
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)第465条の2・第465条の4・第622条の2 e-Gov法令検索(2026-08-06確認。個人根保証契約における極度額の定め、主たる債務者の死亡による元本確定、敷金の返還)
- 国土交通省「民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A」 https://www.mlit.go.jp/common/001316901.pdf(2026-08-06確認。極度額と合意更新の関係、元本確定後の債務の範囲)
- 国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000101.html(2026-08-06確認)
- 間取り別の費用の目安は業界各社の公開相場に基づくもので、公的な料金統計ではありません。実際の金額は現地見積もりで確定します
- 見積もりトラブルの傾向は総務省「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」および国民生活センターの注意喚起に基づきます



