終活とは?やることの全体像と、いつから・何から始めるか|遺品整理の現場から解説

監修・編集責任

山本貴大

株式会社ローカルマーケティングパートナーズ 代表

本記事は、内閣府・厚生労働省の公的統計と、公証人手数料令・遺言書保管手数料令などの法令にもとづき、遺品整理・生前整理の現場で残された家族の負担を見てきた知見をあわせて、終活の全体像をまとめています。

終活とは、人生の終わりに向けて、持ち物やお金、情報、医療や介護の希望、葬儀やお墓のことを少しずつ整えていく準備の総称です。死の準備というより、残りの人生を安心して過ごすための身辺整理と、残される家族の負担を減らすための備え、という2つの側面があります。

この記事では、終活でやることの全体像を5つの領域に整理し、いつから・何から始めるとよいかをまとめます。費用がいくらかかるか、どこに相談すればよいかも、法令で決まっている金額と公的な窓口をもとに具体的に扱います。

遺品整理の現場では、終活をしないまま亡くなった方の家財や書類に、残された家族が向き合う場面に日々立ち会います。その経験から、「これをやっておくと家族が本当に助かる」という優先順位も具体的にお伝えします。各領域の詳しい進め方は専用の記事にまとめているので、この記事を入口として使ってください。

終活とは(意味と言葉の由来)

終活は、人生の最期に向けた準備を指す言葉です。週刊朝日が2009年に連載した「現代終活事情」で知られるようになり、2012年には新語・流行語大賞のトップテンに選ばれました。

いまでは、葬儀やお墓の準備に限らず、持ち物の整理や財産の棚卸し、医療の希望の共有まで含めた、幅広い準備を指す言葉として定着しています。

大切なのは、終活が「家族のため」だけのものではないことです。持ち物や財産を棚卸しする過程で、自分が何を持っていて、これから何を大事にしたいかが見えてきます。

使っていない契約を解約すれば固定費が下がり、住まいが片付けば転倒などの事故のリスクも減ります。将来の不安がひとつずつ形になって片付いていくことは、これからを前向きに過ごす土台になります。

一方で、残される側から見ると、終活の有無は負担の差として現れます。亡くなった後、家族は葬儀の手配、役所や金融機関の手続き、住まいの片付けを、限られた時間のなかで一気に引き受けます。

本人しか知らない情報が多いほど、この負担は膨らみます。終活は、その負担を元気なうちに少しずつ引き取っておく活動だと言えます。

終活でやることの全体像(5つの領域)

終活と呼ばれる準備は範囲が広く、「何から手をつければいいのか分からない」と感じる方がほとんどです。やることを5つの領域に分けて眺めると、全体像がつかみやすくなります。

終活でやること・5つの領域

物と住まいの整理

家財の仕分け、使わない物の処分、実家や住み替えの検討。

お金と相続の準備

財産目録づくり、口座・保険の一覧化、遺言書の検討。

情報の整理

エンディングノート、デジタルの契約やIDの一覧、連絡先。

医療・介護の希望

延命治療や介護についての考えを整理し、家族と共有。

葬儀・お墓の準備

形式や費用の目安を知り、希望を家族に伝えておく。

物と住まいの整理は、いわゆる生前整理です。家財を「残す・保留・手放す」に仕分け、使っていない物を減らしていきます。5つの領域のなかでもっとも体力と時間を使う作業で、後回しにするほど大変になります。進め方の手順や業者に頼む場合の注意点は、生前整理の進め方で詳しく解説しています。

お金と相続の準備は、預貯金・保険・不動産・借入を書き出して財産の全体像を見えるようにすることから始まります。財産の分け方に希望があるなら、法的な効力を持つ遺言書の検討に進みます。

相続放棄や相続登記には期限があるため、財産目録は家族の判断を助ける大切な資料になります。財産目録の作り方や遺言書の基本は、生前整理でやっておく相続・法的な準備にまとめています。

情報の整理の中心は、エンディングノートです。基本情報や口座の一覧、連絡してほしい人などを1冊に書き残しておくと、家族は手探りせずに手続きを進められます。

近年はネット銀行やサブスクリプションなど、本人にしか分からないデジタルの契約が増えており、その一覧化も欠かせません。何をどの順で書くかは、エンディングノートの書き方で項目ごとに解説しています。

医療・介護の希望は、判断力があるうちにしか整理できない領域です。延命治療をどう考えるか、介護が必要になったらどこで過ごしたいか。考えを書き出し、家族と話しておくと、いざというとき家族が「本人はどう望んでいたか」で迷わずに済みます。

厚生労働省も、望む医療やケアを前もって考えて家族や医療者と繰り返し話し合う取り組みを「人生会議」と名付けて呼びかけています。

葬儀・お墓の準備は、費用の目安を知ることから始めるのが現実的です。葬儀の規模や形式で費用は大きく変わり、何も決めていないと家族は短時間で大きな出費を判断することになります。

相場の全体像は葬儀費用の相場と内訳で、希望を事前に固めておく方法は葬儀の事前相談で扱っています。納骨先については、この記事の後半でも選択肢を整理します。

なぜいま終活が広がっているのか

終活という言葉が定着した背景には、人口構造の変化があります。厚生労働省の人口動態統計によると、令和6(2024)年の死亡数は160万5,378人で、調査開始以来もっとも多くなりました。

総人口に占める65歳以上の割合も29.3%に達しています(令和6年10月時点・内閣府 高齢社会白書)。亡くなる人が増え、その一人ひとりに葬儀・手続き・片付けが発生する時代です。

もうひとつの変化が、ひとり暮らしの増加です。内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上で一人暮らしをする人の割合は、令和2(2020)年時点で男性15.0%・女性22.1%にのぼります。令和32(2050)年には男性26.1%・女性29.3%まで増える見込みです。

同居する家族がいれば自然に共有されていた「どこに何があるか」という情報が、いまは共有されないまま残されるようになりました。家族がいても遠方に住んでいれば事情は同じです。

それでも、事前に準備をしたうえで葬儀を迎える家族はまだ少数派です。葬儀を経験した喪主2,000人への調査では、63.8%が事前の準備を何もしないまま当日を迎えていました(鎌倉新書・2026年)。

遺品整理の現場で家族が直面する困りごとの多くは、この「準備のないまま」の結果です。終活が広がっているのは流行というより、家族構成の変化に対する現実的な備えとして必要性が増しているからだと考えられます。

いつから始めるか(健康寿命という目安)

終活を始める年齢に決まりはありません。退職、還暦、配偶者との死別、身近な人の相続を経験したときなど、人生の節目をきっかけに始める方が多いです。

ただ、「いつかやろう」を先送りにしないための目安として、健康寿命という考え方を知っておく価値があります。

平均寿命と健康寿命の差(令和4/2022年時点)
男性の平均寿命 81.05年
男性の健康寿命 72.57年
女性の平均寿命 87.09年
女性の健康寿命 75.45年

内閣府「令和7年版高齢社会白書」より。健康寿命は、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間。

健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間(健康寿命)は、令和4(2022)年時点で男性72.57年・女性75.45年です。同じ年の平均寿命との差は男性で約8.5年、女性で約11.6年あります。

この健康寿命は、「健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問に本人が「ない」と答えたかどうかを集計して算出した数値です。本人の自己申告にもとづくもので、体力の限界を測ったものではありません。平均寿命との差も、2つの平均値の差であって、個人が不調で過ごす年数を意味するわけではありません。

それでも、日常生活に何かしら影響を感じる人が増える時期は、平均寿命よりかなり手前にあると読み取れます。重い家具を動かし、大量の家財を仕分ける作業は、現場で見ている限り70代以降に持ち越すと負担が大きくなります。

年代別に見ると、60代は物の整理の適齢期です。体力があり、退職などで時間も作りやすく、量の多い家財に向き合えます。

70代からは、書類や情報の整理、医療・介護の希望の共有といった、体力に頼らない準備の比重を上げていきます。80代以降やすでに体力に不安がある場合は、無理に自分で片付けようとせず、在りかの共有と意思の伝達を優先し、物の整理は家族や業者の力を借りる計画に切り替えるのが現実的です。

40〜50代の方にとっては、自分の終活というより、親の終活にどう関わるかが先に来ます。親と「どこに何があるか」を共有しておくことは、将来の自分の負担を減らす準備でもあります。

何から始めるか(現場から見た最初の一歩)

一般的には「エンディングノートから」と言われますが、遺品整理の現場から見ると、最初の一歩は在りかの共有です。

亡くなった後の作業でもっとも時間がかかり、家族を疲れさせるのは、通帳・印鑑・権利証・保険証券といった貴重品の捜索だからです。どこにあるかさえ分かれば、手続きの大半は前に進みます。

終活の始め方・5ステップ
  1. 貴重品と重要書類の在りかをまとめる

    通帳・印鑑・権利証・保険証券・鍵。「どこに何があるか」を1か所に集めるか、一覧に書き出します。

    中身を全部見せる必要はありません。在りかが分かるだけで十分です。

  2. エンディングノートに基本情報を書く

    氏名や連絡先、口座やデジタルの契約の一覧など、書きやすい項目から埋めていきます。

  3. 物の整理を小さな範囲から始める

    押し入れ1つ、部屋1つから。「残す・保留・手放す」に分け、家全体を一度にやろうとしないのが続けるこつです。

  4. 家族と共有する

    ノートの在りかや決めたことを、信頼できる家族に伝えます。共有されて初めて準備が活きます。

  5. 専門的な準備に進む

    遺言書の作成、葬儀の事前相談、医療・介護の希望の整理など、必要に応じて専門家に相談します。

順番に迷ったら、「家族が困る順」に手をつけると考えてください。在りかが分からないことが最大の困りごとで、次が解約すべき契約の見落とし、その次が物の量です。

逆に、遺影の準備やお墓のデザインといったテーマは、後回しでも家族が困ることはあまりありません。

完璧を目指さないことも重要です。エンディングノートは全項目を埋める必要がなく、物の整理も一気に終わらせる必要はありません。小さく始めて、年に一度ほど見直す。それだけでも、何もしない場合と比べて家族の負担は大きく変わります。

終活のやることチェックリスト

5つの領域を、実際に手を動かす順に並べ直すと次のようになります。上から順に、家族が困る度合いが高いものです。

すべてを終わらせる必要はありません。上の3つだけでも済ませておけば、残された家族の作業は大きく変わります。

優先度やること目安の所要
通帳・印鑑・権利証・保険証券の在りかを1か所にまとめる半日
加入している保険・年金・口座を一覧にする1〜2日
ノートや一覧の在りかを家族に伝える30分
サブスクリプションやネット銀行など、デジタルの契約を書き出す1日
エンディングノートに基本情報と連絡してほしい人を書く数日〜
押し入れ1つ、部屋1つから物を「残す・保留・手放す」に分ける都度
延命治療や介護の希望を書き出し、家族と話す数回に分けて
葬儀の形式と費用の目安を調べ、希望を伝える1〜2日
納骨先の希望と、お墓を継ぐ人がいるかを整理する都度
遺言書を作成する(分け方に希望がある場合)1〜2か月

低としたものは、優先度が低いという意味であって不要という意味ではありません。遺言書は作成に時間がかかるため、必要だと判断したら早めに着手してください。

デジタルの終活(スマホとパソコンの備え)

いま亡くなったとして、家族はあなたのスマートフォンを開けるでしょうか。中に入っている契約と思い出は、本人以外にはたどり着けないことが少なくありません。

2018年から2020年にかけて総務省行政評価局の調査に協力した69の遺品整理事業者では、デジタル遺品について「そのまま返却する」「依頼があればハードディスク等を破壊する」という回答が多く、専門家と連携してデータを取り出す事業者は多数派ではないと記されています。同報告書は、協力を得られた事業者について「たまたま調査協力を得られた事業者における事実を示すものにすぎない」と述べており、調査全体も実態の一面をとらえたものと位置づけています。

対応は事業者によって分かれるため、データの取り出しを望むなら依頼前に確認が必要です。そのうえで、パスワードが分からなければ専門業者でも開けないことがあり、この領域は生前に本人が手を打っておくのが確実です。

やっておくとよいのは、次の3つです。

契約の一覧を作ることが1つ目です。ネット銀行や証券口座、通信契約、動画や音楽のサブスクリプション。紙の通知が届かないものほど、家族には発見されません。サービス名と、引き落としに使っているカードや口座を書き出しておきます。

2つ目は、写真の在りかを伝えておくことです。クラウドに保存している場合、本人のアカウントに入れなければ家族は取り出せません。どのサービスを使っているかだけでも共有しておくと、遺影の準備で困りません。

3つ目が、ロック解除の扱いです。パスワードそのものをエンディングノートに書くと、盗難や紛失のときにそのまま悪用される危険があります。ノートには「金庫の中の封筒に入れてある」のように在りかだけを書き、本体は別に保管する方法が安全です。

スマートフォンは、ネット銀行や各種サービスの本人確認にも使われています。解約の順番を誤ると他の手続きが進まなくなるため、亡くなった後の解約手順は葬儀後の手続きで解説しています。

終活にかかる費用

終活にお金がかかると思われがちですが、大半のことは費用をかけずに始められます。在りかを1か所にまとめる、口座を一覧にする、家族に伝える。ここまではすべて0円です。

エンディングノートも、市販品を買わずに始められます。市区町村が独自に作成して無料で配布している地域があるため、お住まいの自治体の窓口やホームページを確認してみてください。手持ちのノートに書いても効力は変わりません。

費用がかかるのは、法的な手続きと、物を減らす作業です。このうち法的な手続きの費用は法令で決まっているため、事前に調べられます。

自筆証書遺言書保管制度の手数料

自分で書いた遺言書を法務局に預けておく制度です。手数料は法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令で定められています。

手続き手数料
遺言書の保管の申請1件につき3,900円
遺言書の閲覧の請求1回につき1,700円
遺言書保管ファイルの記録の閲覧1回につき1,400円
遺言書情報証明書の交付請求1通につき1,400円
遺言書保管事実証明書の交付請求1通につき800円

保管の申請にかかるのは3,900円です。遺言者本人は、生前も内容を確認できます(原本の閲覧1,700円、モニターでの閲覧1,400円)。下の2つは、亡くなった後に家族が請求するときの手数料です。

この制度を使うと、家庭裁判所の検認が不要になります。検認は、家庭裁判所が遺言書の形状や状態を確認して偽造や変造を防ぐ手続きです。相続人全員の戸籍を集めて申立てる必要があり、家族にとっては時間と手間のかかる工程になります。

なお、公正証書で作った遺言も検認は不要です(民法1004条2項)。検認が必要なのは、自分で書いて保管制度を使わなかった遺言書などです。

公正証書遺言の手数料

公証役場で作る遺言書です。手数料は公証人手数料令の別表で決まっていますが、財産の総額を表に1回あてはめるのではありません。財産を受け取る人ごとに価額を出し、それぞれの手数料を合算します。

1人が受け取る財産の価額手数料
50万円以下3,000円
50万円を超え100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下1万3,000円
500万円を超え1,000万円以下2万円
1,000万円を超え3,000万円以下2万6,000円
3,000万円を超え5,000万円以下3万3,000円
5,000万円を超え1億円以下4万9,000円
1億円を超え3億円以下4万9,000円に、超過額5,000万円までごとに1万5,000円を加算

たとえば3,000万円を3人の子に均等に分ける場合、1人あたり1,000万円なので2万円が3人分で6万円です。総額を1回あてはめた2万6,000円とは、金額が変わります。

これに、財産の総額が1億円以下のときは1万3,000円が加算されます(遺言加算)。先ほどの例なら、6万円に1万3,000円を足した7万3,000円が基本の額です。

このほか、証書の枚数が規定を超えると1枚につき300円が加算され、正本と謄本の交付にも手数料がかかります。公証人に出向いてもらう場合は、日当(1日2万円、4時間以内は1万円)と交通費が別に必要です。病床で作成する場合は、手数料に50%が加算されます。

正確な額は、作成を依頼する公証役場に見積もりを確認してください。

費用が決まっていないもの

生前整理を業者に頼む場合、葬儀を生前に契約する場合、死後の手続きを第三者に委任する場合。これらの費用は事業者ごとに違うため、複数から見積もりを取って比べることが欠かせません。

このうち死後事務委任契約を公正証書で作る場合の公証人手数料は、通常の額の半分と定められています(公証人手数料令18条の2)。ただし、実際に手続きを代行してもらう報酬は別に発生し、その額は契約先によって異なります。

生前整理の費用は、物の量と間取りで決まります。遺品整理と同じ考え方なので、遺品整理の費用相場料金シミュレーターで目安を確認できます。

現場から見ると、物を減らす費用は「いま自分が払うか、亡くなった後に家族が払うか」の違いでしかありません。量が同じなら、かかる手間も費用も大きくは変わらないからです。

どこに相談すればよいか

終活の相談先は、内容によって分かれます。民間のサービスを探す前に、公的な窓口で足りることが少なくありません。

相談したいこと窓口費用
終活全般、エンディングノートお住まいの市区町村の窓口無料(自治体による)
介護、医療、日々の暮らしの不安地域包括支援センター無料
公正証書遺言の作成公証役場手数料は上表のとおり
自筆証書遺言の保管法務局(遺言書保管所)3,900円
契約トラブル、強引な勧誘消費者ホットライン 188無料(通話料は別)
法的なトラブル、専門家の紹介法テラス無料(要件あり)

地域包括支援センターは、介護保険法にもとづく施設です。市町村が設置するほか、市町村から委託を受けた法人が設置する場合もあります。地域住民の心身の健康の保持と生活の安定のために必要な援助を、包括的に行うことを目的としています。

介護の相談窓口として知られていますが、ひとり暮らしの不安や、これからの住まいの相談も受け付けています。まだ介護が必要でない段階でも利用できます。

遺言の内容や相続の分け方について法的な判断が必要な場合は、弁護士や司法書士に相談してください。当社は片付けの段取りと費用の面からお答えする立場で、法律の判断は行いません。

民間の終活サービスを使う場合は、契約前に解約の条件と返金の有無を書面で確認してください。金額が大きい契約ほど、その場で決めないことが大切です。

遺品整理の現場から見た「やってよかった終活」

遺品整理の現場には、終活をしていた方の住まいと、していなかった方の住まいの両方があります。その差は具体的で、金額と時間に表れます。

いちばん大きいのは、物の量が費用に直結することです。遺品整理の料金は間取りだけでなく家財の量で決まり、同じ間取りでも量が多ければ作業員の人数もトラックの台数も増えます。

使っていない物を元気なうちに減らしておくことは、そのまま残される家族の出費と時間の軽減につながります。費用の目安は遺品整理の費用相場で公開しており、間取りと量から料金シミュレーターで概算を試すこともできます。

在りかの共有も、捜索の手間をはっきり分けます。貴重品の場所が分からない現場では、引き出しや衣類のポケット、本の間、仏壇の裏まで、1点ずつ確認しながらの作業になります。

期間が延びるだけでなく、「大事な物をうっかり処分してしまわないか」という緊張が、家族と作業者の双方に重くのしかかります。反対に、在りかの一覧が1枚あるだけで、捜索はほぼ不要になります。

まだ使える物の扱いも、生前と死後で変わります。趣味の道具やコレクション、状態のよい家電は、本人が元気なうちなら、価値の分かる人に譲る、買取に出すなど納得のいく形で手放せます。

亡くなった後では、家族には価値の判断がつかず、思い出の品ほど「処分してよいのか」と悩ませることになります。何を残し、何は手放してよいかの意思表示は、それ自体が家族への配慮になります。

住まいが賃貸の場合は、時間の制約が加わります。亡くなった後も家賃は発生し、退去には期限があります。限られた日数で家財をすべて運び出し、部屋を明け渡す負担は、持ち家の片付けとは質が違います。

賃貸で暮らしている方は、家財を身軽にしておくことと、契約書や管理会社の連絡先を分かるようにしておくことが、そのまま家族への備えになります。部屋に残った家財がどう扱われるかは、残置物とはで解説しています。

お墓と納骨をどう考えるか

納骨先を決めておくかどうかで、家族の判断の重さが変わります。決まっていない場合、家族は葬儀の直後という余裕のない時期に、費用も含めて選ぶことになるためです。

考える順番としては、まずお墓を継ぐ人がいるかから入るのが現実的です。継ぐ人がいるなら既存のお墓に納める選択肢がありますが、いない場合や、子どもに管理の負担をかけたくない場合は別の方法を検討することになります。

選択肢には、一般的なお墓のほか、屋内に納める納骨堂、樹木を墓標とする樹木葬、寺院や霊園が管理を引き受ける永代供養墓などがあります。継承者を必要としない形式が増えており、費用も管理の考え方も方式によって幅があります。

誤解されやすいのが「永代供養」という言葉です。永代とついていても、遺骨をずっと個別に安置し続けるとは限りません。一定期間が過ぎると他の方の遺骨と一緒に合祀する契約もあれば、当初から合祀する形式もあります。個別の安置が何年続くのか、そのあとどう扱われるのかは契約ごとに違うため、申し込む前に必ず確認してください。

ここで注意が必要なのは、遺骨の扱いには法律の定めがあることです。焼骨を埋蔵するには墓地として許可を受けた区域に納める必要があり(墓地、埋葬等に関する法律4条1項)、遺骨を捨てる行為は刑法190条の遺骨遺棄にあたります。

墓地埋葬法が定めているのは焼骨を埋蔵する場所であり、手元で保管することを直接禁じた規定はありません。ただし、「供養の方法は自由」という説明を、遺骨の処分にまで広げて理解しないでください。散骨については、厚生労働省の研究事業がまとめた事業者向けのガイドラインがあります。焼骨を形が分からないほど粉状に砕くこと、陸上ではあらかじめ特定した区域(河川と湖沼は除く)で行うこと、海洋では海岸から一定の距離を離すこと、周辺の住民や漁業者への配慮を欠かさないことが挙げられています。散骨そのものを定めた法律はなく、地域によっては条例で場所を制限しているため、実施する前に自治体とガイドラインの両方を確認してください。

位牌や仏壇、お墓は、民法上は祭祀財産と呼ばれ、通常の相続財産とは別に扱われます。誰が引き継ぐかを決めておくと、家族が迷わずに済みます。

おひとりさま・賃貸住まいの終活

頼れる家族が近くにいない方にとって、終活は「誰が動いてくれるのか」を決めることから始まります。物や情報の整理と並行して、死後の手続きの担い手を確保しておく必要があるからです。

親族に頼める場合は、その方に在りかと希望を共有しておきます。頼れる親族がいない場合は、葬儀や納骨、契約の解約といった死後の手続きを第三者に依頼する死後事務委任契約という方法があります。

ほかにも、日常の安否確認を行う見守りサービス、入院や施設入居の際の身元保証サービスなど、単身者向けの仕組みが増えています。いずれも契約内容と費用はさまざまなので、複数を比較し、内容を書面で確認してから決めることが大切です。

賃貸でひとり暮らしの場合は、残された家財の扱いが連帯保証人や大家さんの負担になりやすいという事情もあります。家財を減らしておくこと、緊急連絡先を伝えておくこと、重要書類をまとめておくこと。この3つだけでも、万一のときに周囲にかかる負担は大きく変わります

家族と共有して、はじめて終活になる

終活の準備は、本人の頭の中やノートの中にあるだけでは機能しません。家族が「準備があること」と「その在りか」を知っていて、初めて役に立ちます。

前述の調査でも、葬儀業者を選ぶときに87.1%が他社と比較せず1社だけで決めており、相見積もりを取った人は1割ほどにとどまりました。逝去後の限られた時間のなかでは、じっくり比較したり探したりすること自体が簡単ではありません。だからこそ、希望や準備は元気なうちに家族へ伝えておく意味があります。

家族への切り出し方に決まった形はありませんが、現場で聞く範囲では、帰省や法事など家族が集まる機会に、軽い話題として持ち出すのが自然です。「エンディングノートを書いてみた」「大事な書類はこの棚にまとめた」と在りかを伝えるだけでも、共有としては十分に機能します。

親に終活をすすめたい立場の方は、順番に注意が必要です。いきなり「片付けよう」と切り出すと、人生を否定されたように感じさせてしまい、かえって話が進まなくなります。

「どこに何があるかだけ教えてほしい」という在りかの確認から入り、物の整理は本人のペースに任せる。この順番なら、親の自尊心を守りながら、家族として最低限必要な情報を確保できます。

終活でつまずきやすいこと

終活には、進めるうえでつまずきやすい点がいくつかあります。現場で見かけるものを含めて整理します。

完璧主義で止まってしまうのが1つ目です。エンディングノートの全項目を埋めようとして挫折する、家全体を片付けようとして初日で力尽きる、というのは典型的なパターンです。小さく始めて続けるほうが、結果として多くのことが残ります。

2つ目は、一人で決めて家族に押し付けてしまうことです。葬儀の形式やお墓の希望は、実行するのは残された家族です。希望は伝えつつ、最終的な判断の余地を家族に残しておくと、双方の負担になりません。

3つ目は、その場での高額な契約です。終活に関わるサービスには、葬儀の生前契約や互助会、訪問での買取など、契約を急がせる形のトラブルが相談機関に寄せられているものもあります。

金額の大きい契約は即決せず、複数の選択肢を比較し、解約の条件まで書面で確認してから決めるようにしてください。葬儀まわりの契約の注意点は葬儀の事前相談で、買取や業者選びの注意点は生前整理の進め方で詳しく扱っています。

4つ目は、書いたきり放置してしまうことです。口座や契約、気持ちは変わります。古い情報のまま残ると、かえって家族を混乱させることもあります。年に一度など区切りを決めて、内容を見直す習慣にしておくと安心です。

5つ目は、現場でとくに多いものです。準備をしたこと自体が家族に伝わっていないケースがあります。立派なエンディングノートが引き出しの奥から出てきても、家族がその存在を知らなければ、手続きが終わったあとに見つかることになります。

6つ目は、物を減らしすぎて本人が不便になることです。終活を意識するあまり、まだ使っている物や、日々の楽しみだった道具まで手放してしまう方がいます。終活は残りの人生を過ごしやすくするための準備なので、いま必要な物を削る必要はありません。

まとめ

  • 終活とは、物と住まい・お金と相続・情報・医療と介護の希望・葬儀とお墓という5つの領域を、元気なうちに整えていく準備の総称です。
  • 背景には、死亡数の増加とひとり暮らしの増加があります。準備のないまま亡くなると、残された家族が短時間ですべてを判断することになります。
  • 始める年齢に決まりはありませんが、体力を使う物の整理は健康寿命の視点から早めが有利です。
  • 最初の一歩は、貴重品と重要書類の在りかを1か所にまとめること。現場で家族がもっとも困るのは捜索だからです。
  • 大半のことは0円で始められます。費用がかかる遺言書の手続きは、法令で金額が決まっているため事前に調べられます。
  • 相談先は内容で分かれます。介護は地域包括支援センター、遺言は公証役場や法務局、契約トラブルは消費者ホットライン188が公的な窓口です。
  • 準備は家族と共有されて初めて機能します。完璧を目指さず、小さく始めて定期的に見直してください。
参考にした調査・制度(16件)

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よくある質問

終活とは何をすることですか?
人生の終わりに向けた準備の総称で、物と住まいの整理、お金と相続の準備、情報の整理、医療・介護の希望の共有、葬儀・お墓の準備という5つの領域に分けられます。すべてを一度にやる必要はなく、できる領域から少しずつ進めるものです。
終活は何から始めればよいですか?
貴重品と重要書類の在りかを1か所にまとめることから始めるのがおすすめです。遺品整理の現場では、通帳や権利証の場所が分からないことが家族の最大の負担になっています。あわせて、押し入れ1つなど小さな範囲から物の整理を始めると無理がありません。
終活はいつから始めるべきですか?
決まった年齢はありません。ただ、健康上の問題で日常生活が制限されずに生活できる期間(健康寿命)は男性72.57年・女性75.45年(令和4年時点)とされ、体力が必要な物の整理は元気なうちが適しています。退職や子どもの独立などの節目が始めどきです。
終活にお金はかかりますか?
エンディングノートの記入や持ち物の整理など、大半のことは費用をかけずに始められます。費用がかかるのは遺言書の作成や整理業者への依頼などです。自筆証書遺言書保管制度の保管申請は1件3,900円と決まっています。公正証書遺言は、財産を受け取る人ごとに算出した手数料の合計に、財産の総額が1億円以下なら1万3,000円を加算した額が基本になります。
親に終活をすすめるにはどうすればよいですか?
「片付けて」と迫るのではなく、帰省や法事などの機会に「どこに何があるかだけ教えてほしい」と在りかの共有から切り出すのが現実的です。本人の気持ちを尊重し、勝手に物を処分しないことが、話し合いを続けるうえで大切です。
おひとりさまの終活では何を優先すべきですか?
自分の死後の手続きを誰が行うかを決めておくことが最優先です。頼れる親族がいない場合は、死後事務委任契約などの制度を検討します。賃貸住まいの場合は、部屋に残る家財の扱いについて連帯保証人や大家さんに負担がかかることも踏まえて準備しておくと安心です。
終活はどこに相談すればよいですか?
内容によって窓口が分かれます。介護や医療は地域包括支援センター、遺言は公証役場や法務局、契約トラブルは消費者ホットライン188が公的な相談先です。市区町村がエンディングノートの配布や終活の相談を行っている地域もあるため、まず自治体の窓口に問い合わせると全体像がつかめます。
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