葬儀の追加費用は、基本プランに含まれない項目が積み上がって生まれます。この仕組みそのものは葬儀費用の相場と内訳で扱っています。
ただし国民生活センターに寄せられた相談を読むと、もう一つの側面が見えます。総額がはっきりする時点で、すでに選び直せなくなっているという点です。広告の30万円が約80万円に、50万円が総額200万円超になった相談があります。
この記事では、その3件がどういう経緯だったのかを一次資料から追い、契約前に確認しておくことを整理します。
実際にいくら動いているのか
国民生活センターが2026年6月に公表した資料には、相談の要旨が3件載っています。いずれも広告やチラシの金額から契約額が大きく離れています。以下はいずれも相談者から寄せられた申し出にもとづくもので、葬儀社側の説明は含まれていません。
金額の幅だけを見ると、どれも法外な請求に見えるかもしれません。ただし最終額そのものは、形式別の平均と比べて必ずしも突出していません。
鎌倉新書の全国調査では家族葬の平均が約106万円、一日葬が約88万円です。これに照らすと、事例1の約120万円は家族葬の平均をやや上回る水準、事例2の約80万円は一日葬の平均を下回ります。問題は最終額が相場外れであることではなく、広告に出ていた額との差が、いつ分かったかにあります。
経緯を追うと、2つの型がある
相談の本文を読むと、金額が確定する場面の状況が事例ごとに違います。
段階4で何が起きたかは、相談ごとに記録されています。
事例1では、キャンセルを申し出たところ、葬儀をしないなら搬送費用として20万円を請求すると言われました。その後、担当者に次の予定があるとせかされ、提示されたプランから食事や貸布団を外して約120万円で署名しています。
事例2では、話が違うのでキャンセルしたいと伝えたものの、遺体を引き取ってもらった以上どうしようもないと思い直し、霊柩車のグレードを落として約80万円で契約しました。
どちらも、金額の妥当性を説明されて納得したわけではありません。搬送が済んでいることが、断りにくさを作っています。
型B 金額は先に出ていたが、明細がなかった(事例3)
事例3は経緯が違います。この相談者は、電話の後で葬儀社を訪問した時点で十数種類のプラン表を示されています。搬送より前に金額が出ていました。
ネットに出ていた低価格のプランを申し出たところ、それは無宗教の方向けで、宗教関連の方にはこちらになる、と言われます。案内されたのは140万円のプランでした。驚きつつも、お通夜や告別式で読経してほしかったため承諾しています。
問題はその後です。見積書にはプラン名と一式としか書かれておらず、明細がありませんでした。そこに会食などの追加費用が発生し、総額は200万円を超えました。
つまりこの事例で総額を押し上げたのは、断りにくさではなく見積書に明細がなかったことです。何が含まれ何が別途かを確認できる状態になかった、という点で型Aとは別の問題です。
広告の条件を、自分で読んでおく
事例1では、葬儀後に相談者が広告を見直したところ、「お打ち合わせのうえ、ご依頼いただけない場合は搬送にかかった費用はいただきません」と書かれていました。搬送費20万円を請求すると言われた場面で、この一文を知っていれば応じ方が変わります。
搬送を頼む前に確認しておきたいのは、次の2点です。
- その葬儀社で葬儀をしなかった場合、搬送費はいくらか。無料と書かれていないか
- 広告やチラシの金額に、何が含まれると書かれているか
慌ただしい場面ですが、電話をかける前に広告のページを保存しておくだけでも後で確認できます。
事前に電話で確かめても、金額は動きうる
事例2の相談者は、チラシの金額について電話で2度問い合わせています。それでも引き取りの翌日に80万円以上の見積もりが出ました。
さらに請求書の明細には、マイクの使用料、花の搬入搬出代、仏具の搬入搬出代、仏衣を着せるための費用が含まれていました。チラシには仏具と仏衣は料金に含まれると書かれていたため、相談者は納得できないとしています。
口頭での確認は記録が残りません。金額を確かめるなら、含まれる範囲まで書いた見積書を搬送の前にもらうのが確実です。
料金の相談は増えているのか
国民生活センターによると、葬儀サービスに関する相談は年間900件前後で推移しています。件数そのものより、相談の中身が変わってきました。
国民生活センターは、この相談を増加傾向にあると評価しています。件数は2019年度の632件から2024年度の978件へ増えました。
2025年度は917件で前年より少なく見えますが、これは集計途中の値です。同じ資料の注記によれば、2024年度を同じ時点(2025年3月31日までの登録分)で数えた件数は911件でした。同じ条件で比べると911件から917件で、減ってはいません。
そして件数以上に動いたのが割合です。料金についての相談が、6年で3分の1から半数以上になりました。
相談の中身を種類別に見ると、次の順です。2025年度に受け付けた917件を、複数回答で集計したものです。
| 順位 | 相談内容 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | 高価格・料金 | 482件 |
| 2 | 説明不足 | 346件 |
| 3 | 見積もり(全般) | 194件 |
| 4 | 契約書・書面(全般) | 178件 |
| 5 | 販売態度 | 111件 |
複数回答なので単純に足すことはできませんが、金額そのものだけでなく、説明や見積もりの不備を挙げる相談も多いことが分かります。事例3で問題になった「明細のない見積書」は、3位の類型にあたります。
なお契約当事者の平均年齢は62.7歳で、50歳代からの相談が最も多くなっています(2025年度受付分・年代の集計はn=728)。
契約金額そのものも上がっている
同じ資料によると、相談として寄せられた契約購入金額の平均は年々増加しており、2025年度は約109万円でした。
ただしこれは相談に至った事案の平均であって、葬儀費用の相場ではありません。相場を知りたい場合は葬儀費用の相場と内訳を参照してください。
差はどこで生まれるのか
広告の額と請求額が離れる背景には、基本プランの構造があります。
葬儀社が示す基本プランは、葬儀に必要な最低限の物品とサービスをまとめたものです。ここに、状況によって変わる費用は含まれていません。
火葬までの日数が延びれば安置とドライアイスが増え、参列者が想定より多ければ飲食と返礼品が人数分だけ加算されます。基本プランは出発点で、そこに実際の状況に応じた費用が積み上がります。
| 項目 | 基本プランでの扱い | 追加になりやすい条件 |
|---|---|---|
| 安置・ドライアイス | 一定日数まで含む | 火葬まで日数が延びると1日ごとに加算 |
| 搬送(寝台車・霊柩車) | 一定距離まで含む | 病院・安置・式場間の距離が超過すると加算 |
| 火葬料 | 含む・別途は葬儀社による | 市民以外の料金、民営火葬場、上限超過で加算 |
| 飲食・返礼品 | 含まない、または少人数分のみ | 参列者が増えると人数分だけ加算 |
| 式場・斎場の使用料 | プランによる | 希望する式場や利用時間で変動 |
| 宗教者へのお礼(お布施) | 含まないことが多い | 別途必要。宗派や戒名で変動 |
| 祭壇・棺などのグレード | 標準仕様まで | 上位仕様や湯灌などのオプションで加算 |
実際の扱いは葬儀社によって違います。事例2のように、チラシで含まれると書かれていたものが請求書に別項目で載ることもあります。書面で範囲を確認してください。
追加費用が出やすいきっかけ
日数で変わる
火葬までの日数が延びると、安置やドライアイスが1日ごとに加算されます。火葬場が混み合う時期はとくに延びやすくなります。
人数で変わる
参列者が想定より増えると、飲食や返礼品が人数分だけ加算されます。家族葬でも、後から弔問が増えると変動します。
距離・地域で変わる
搬送の距離が超過したときの加算や、火葬料の地域差、その自治体の住民でない場合の料金などです。
希望で変わる
祭壇や棺のグレードアップ、湯灌などのオプション、宗教者へのお布施です。
契約前に、火葬までの想定日数と参列者のおおよその人数を伝え、その場合にいくら加算されるかを聞いておくと、見積もりと実際の差が小さくなります。
広告の表示そのものが問題になった例
消費者庁は2021年7月2日、「追加料金一切不要のお葬式」などの表示が実際とは異なるとして、葬儀サービスを提供する事業者に景品表示法にもとづく課徴金納付命令を出しました。課徴金の額は1億180万円です。
対象になった表示が行われていたのは2016年4月から2017年12月にかけてで、直近の処分ではありません。ただし「追加料金不要」という表示が、実際には成り立たない場合があると公的に認定された例として参考になります。
表示を鵜呑みにせず、何が含まれ何が別料金かを見積書の明細で確認する。これが最も確実な方法です。
見積書のどこを見るか
国民生活センターは、見積書を必ず受領し、明細をよく確認するよう呼びかけています。事例3では、見積書に明細がないまま追加費用が発生し、総額200万円を超えました。
確認したいのは次の点です。
- 「一式」「セット」に何が含まれ、何が別料金か
- 火葬料は含まれるか。その自治体の住民でない場合の料金はどうなるか
- 安置とドライアイスは何日分までか。1日延びるといくらか
- 搬送はどの距離まで含むか
- 参列者が増えた場合の飲食・返礼品の単価
- 宗教者へのお礼は含まれるか
そのうえで「この条件だと総額でいくらか」を尋ね、書面で残してください。含まれる範囲をそろえて総額で比べると、葬儀社ごとの違いが見えます。
打ち合わせは複数で
国民生活センターは、葬儀社との打ち合わせを親族や第三者など複数で行うよう勧めています。
事例1では、担当者に次の予定があるとせかされ、その場で署名しています。一人だと、提示された金額が妥当かを判断する材料がありません。近くにいる親族に同席してもらうだけでも、その場で保留にする判断がしやすくなります。
高い金額を提示されたら
急かされても、その場で署名する義務はありません。金額に納得できないときは、何がいくらなのかを書面で示すよう求めてください。
判断がつかない場合や、契約後にトラブルになった場合は、消費者ホットライン188に相談できます。全国共通の3桁の番号で、最寄りの消費生活センターにつながります。
葬儀社が決まっていない段階での探し方は葬儀社が決まっていないとき、時間に余裕があるうちの備えは葬儀の事前相談で扱っています。
まとめ
- 追加費用は、基本プランに含まれない項目が積み上がって生まれます
- 国民生活センターの相談では、広告の50万円が約120万円、チラシの30万円が約80万円、50万円の表示が総額200万円超になっていました。いずれも相談者側の申し出にもとづくもので、葬儀社側の説明は含まれていません
- 事例1と2は、遺体の搬送や引き取りが済んだ後に金額が提示され、断りにくい状態で契約に至っています
- 事例3は金額が先に出ていましたが、見積書に明細がなく、そこに追加費用が重なりました
- 搬送を頼む前に、断った場合の搬送費と、広告の額に何が含まれるかを確認してください
- 葬儀サービスの相談は増加傾向で、料金に関する割合は2019年度の33.2%から2025年度の52.6%へ上がりました
- 見積書は必ず受け取って明細を確認し、打ち合わせは複数で行ってください
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当社は遺品整理と残置物撤去を行う事業者です。葬儀の追加費用と同じことは、遺品整理でも起こります。当社では作業範囲と処分の経路、料金の内訳を書面の見積書でお示しし、作業地の一般廃棄物収集運搬業許可をどう確保しているかもご説明します。
遺品整理のおおよその試算は料金シミュレーターで確認できます。ご相談は info@ihin-seiri-pro.jp までご連絡ください。
参考にした調査・制度(3件)
- 国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル−「家族葬だから安い」と思っていませんか?−」(2026年6月3日公表)(2026-08-07確認。相談事例3件の要旨と受付年月・属性、年度別相談件数〔2019年度632件〜2025年度917件〕、「高価格・料金」に関する相談割合〔33.2%〜52.6%〕とその定義、主な相談内容の上位5位〔n=917・複数回答〕、契約当事者の平均年齢62.7歳、平均契約購入金額約109万円〔2025年度〕、見積書の受領と複数での打ち合わせの勧め、消費者ホットライン188)
- 鎌倉新書「第1回 葬儀費用の実態と納得度調査」(2025年)(最終的な支払額が当初の見積もりから平均19.5万円高く、3人に1人が費用増を経験したとの発表。「いい葬儀」利用者へのインターネット調査で、19.5万円が全体平均か費用増を経験した人の平均かは発表資料に明示がない。本記事の形式別平均〔家族葬約106万円・一日葬約88万円〕は同社「第6回お葬式に関する全国調査」による)
- 消費者庁「株式会社ユニクエストに対する景品表示法にもとづく課徴金納付命令」(2026-08-07確認。2021年7月2日発出。「小さなお葬式」の名称で供給する葬儀サービスのうち4役務について、景品表示法8条1項にもとづく課徴金納付命令1億180万円。対象となった表示期間は2016年4月1日から2017年12月27日まで)



