賃貸や相続の場面で「残置物(ざんちぶつ)」という言葉を見聞きすることがあります。室内に残されたままの家具・家電・生活用品などの動産を指す言葉です。
ただし、この言葉は場面によって指すものと論点が変わります。 入居するときに前の人が残していったエアコンも残置物ですし、入居者が亡くなった後に室内に残された家財一式も残置物です。前者で問題になるのは「壊れたら誰が直すか」、後者で問題になるのは「誰の物で、誰が処分費を払うか」です。
同じ言葉でも、知りたいことが違えば見るべき場所も変わります。この記事では場面ごとに整理します。
残置物とは
残置物とは、賃貸借契約や不動産の取引において、室内や敷地内に残されたままになっている動産の総称です。家具や家電、衣類、寝具、食器といった生活用品のほか、現金や貴重品、書類などが含まれることもあります。
この言葉は主に3つの場面で使われます。
共通しているのは、残置物が「持ち主のいない物」とは限らないことです。多くの場合、依然として所有者が存在します。だからこそ、誰の物かを確認しないまま処分すると後々のトラブルになります。
入居するときの残置物(設備との違い)
これから借りる部屋にエアコンや照明、給湯器がついている。この場合、その物が「設備」なのか「残置物」なのかで扱いが変わります。
何が違うのか
| 項目 | 設備 | 残置物 |
|---|---|---|
| 経緯 | 貸主が入居者のために設置した | 前の入居者が置いていった |
| 所有 | 貸主 | 貸主が前の入居者から引き継いでいるのが通常。引継ぎの処理が済んでいなければ前の入居者に残る |
| 壊れたときの修理 | 貸主が修繕義務を負う(民法606条) | 貸主が修繕義務を負わないとする扱いが一般的 |
| 使えなくなったとき | 貸主が交換・修理する | 撤去して自分で用意することになる場合がある |
| 入居者が勝手に処分 | できない | できない(いずれにせよ入居者の物ではないため) |
修理義務の根拠は民法606条1項です。
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
設備であれば「賃貸物」に含まれるため、通常の使用で壊れた場合は貸主が直します。一方、残置物については、貸主が修繕義務を負わないことを契約で明確にしたうえで残しておく扱いが一般的です。
残置物になりやすい物
現場でよく見かけるのは次のような物です。いずれも前の入居者が自分で設置し、撤去せずに置いていったものです。
| 物 | 起きやすいこと |
|---|---|
| エアコン | 数年で効きが悪くなる。修理か交換かで負担の話になりやすい |
| 照明器具 | 蛍光灯やLEDの寿命。交換は入居者負担になることが多い |
| 給湯器のリモコン | 本体は設備でリモコンだけ残置物、という混在が起きる |
| ウォシュレット | 故障時の交換費用が高く、負担をめぐる話になりやすい |
| カーテンレール・物干し | 撤去したいと言っても外せないことがある |
| 造作棚・収納 | 使わなくても勝手に外せない |
エアコンが最も多く、金額も大きくなります。修理で数万円、交換なら本体と工事で十万円前後かかることもあり、どちらが負担するかは入居前に決めておきたい部分です。
残置物がある物件を選ぶかどうか
前の人の物が残っていること自体は、必ずしも不利ではありません。判断材料として整理します。
| 見方 | 内容 |
|---|---|
| 助かる面 | エアコンや照明を自分で買わずに済み、初期費用を抑えられる |
| 助かる面 | 引越し当日から使える。設置工事の手配が要らない |
| 気をつける面 | 壊れたときの修理・交換費用が自分の負担になりうる |
| 気をつける面 | 古い機種だと電気代が高くつくことがある |
| 気をつける面 | 使わなくても勝手に処分できない |
初期費用を抑えたい場合は利点になりますが、年数の経った家電が残っている場合は、修理費や電気代まで含めて考えると得とは限りません。製造年をシールで確認できることが多いので、内見のときに見ておくとよいでしょう。
見落とされやすい点
ここで注意したいのが、残置物であっても入居者が勝手に処分できるわけではないことです。その物の所有者は、いまの入居者ではありません。前の入居者が所有権を放棄し、貸主がそれを引き継いだ扱いになっている場合もあれば、放棄の意思が確認できておらず前の入居者に所有権が残っている場合もあります。いずれにせよ他人の物なので、壊れていても無断で捨てると問題になります。撤去したい場合は貸主か管理会社に相談してください。
物を置いて出ていっただけで所有権が自動的に移るわけではない点も押さえておきます。動産の所有権が前の入居者から貸主へ移るには、前の入居者が所有権を放棄し、貸主が所有の意思をもって占有する(民法239条1項)か、両者の間で譲渡や放棄の合意があるかのいずれかが必要です。実務では退去時に書面で取り交わしますが、その処理が済んでいないまま次の入居者が入っていることもあります。
もうひとつ、契約書の書き方によって結論が変わります。契約書や重要事項説明書に残置物である旨が明記され、貸主が修繕義務を負わないと合意されているなら、その扱いになります。一方、そうした記載がなく「付帯設備」とだけ書かれている場合は、設備として貸主が負担すべき場面もあります。
内見のときに気づいたら、次の3点を確認しておくと後で困りません。
- その物が設備か残置物か
- 残置物の場合、壊れたときの修理費は誰が負担するか
- 使わない場合、撤去してもらえるか。撤去費用は誰が負担するか
口頭のやり取りだけで済ませず、契約書か重要事項説明書に記載してもらうのが確実です。
退去後・死亡後の残置物
ここからが、この記事で詳しく扱う場面です。管理会社や大家にとって実務上の負担が大きいのはこちらになります。
問題になる場面
| 場面 | 起きやすい状況 |
|---|---|
| 通常の退去後 | 入居者が一部の家財を置いたまま退去し、連絡が取れない |
| 入居者の死亡 | 単身入居者が亡くなり、相続人の有無や所在が分からない |
| 相続・実家じまい | 親の住んでいた賃貸や持ち家に大量の家財が残る |
| 空き家 | 所有者が判明しない空き家に家財が残されたまま放置される |
とくに難しいのが、単身の入居者が亡くなったケースです。相続人がすぐに見つからない場合、賃貸借契約の解除も室内の片付けも進められず、次の募集ができないまま部屋が長期間止まってしまうことがあります。
所有権は誰のものか
入居者が亡くなった場合、室内の家財の所有権は原則として相続人に引き継がれます。残された物は管理会社や大家のものではなく、相続人の財産という扱いです。
そのため、相続人の同意を得ないまま処分すると、所有権を持つ相続人に対する不法行為となり、損害賠償を求められるおそれがあります。「退去して連絡もつかないのだから処分してよいはず」という自己判断は危険です。
通常の退去の場合も考え方は同じで、置いていった物の所有権は退去者にあります。契約書に「退去後に残された物の所有権を放棄する」旨の条項があっても、それだけで当然に処分できるとは限りません。
通常の退去で残された場合
亡くなったケースほど複雑ではありませんが、こちらも自己判断で処分はできません。退去者と連絡が取れる場合と取れない場合で進め方が変わります。
連絡が取れるなら、置いていった物をどうするかを確認し、処分してよいという意思を書面で残します。撤去費用を負担してもらう場合は、金額の目安を伝えたうえで合意します。敷金から差し引く形にするなら、その旨も明確にしておきます。
連絡が取れない場合は、契約書の記載を確認してください。「退去後○日を経過しても引き取りがない場合、所有権を放棄したものとみなす」といった条項が入っていることがあります。ただしこの種の条項があっても、それだけで直ちに処分してよいとは限りません。通知を試みた記録を残し、一定期間保管したうえで判断するのが安全です。
保管期間について法律上の一律の定めはありません。実務では数か月程度を目安に置く例が見られます。契約書に期間を定めておけば判断の基準にはなりますが、条項があるからといって当然に処分してよいことにはなりません。個人の入居者との契約では、一方的に不利な条項が無効と判断される場合があります(消費者契約法10条)。入居の段階から備えるなら、国が示すモデル契約条項を使うほうが確実です。
無断で処分できない理由がもうひとつある
権利があっても実力行使で回収してはいけない、という考え方があります。賃料が滞納されていても、契約が終了していても、大家が自分の判断で鍵を交換したり家財を運び出したりすることは認められません。明文の一般規定はありませんが、裁判例が積み重ねてきた考え方です(自力救済の禁止)。実際に無断で立ち入って家財を運び出せば、不法行為として賠償を求められるほか、刑事責任を問われることもあります。
所有権の問題と、この手続きの問題は別々に効いてきます。どちらか一方をクリアしても処分できるようにはなりません。
適法に処分するための実務手順は残置物処分の同意書で詳しく扱っています。相続人に署名を求める場合、その署名が相続放棄を閉ざしうるという論点もあるので、あわせて確認してください。
進め方の全体像
入居者が亡くなった場合、実務は次の順に進みます。
- 契約の状態を確認する(解約、期間満了)。賃借人が亡くなった場合、賃借権は相続人に承継されるため契約は自動では終了しません。 相続人との合意解除か、相続人が不明なら相続財産清算人との協議で解除する必要があります
- 相続人を調査し、連絡を試みる
- 室内の状況を記録する(写真・動画・目録)
- 相続人と同意書を交わす、または引き取りの意思を確認する
- 一定期間保管する
- 同意の範囲で処分する
相続人が見つからない、全員が放棄した、意見が割れている。こうした場合は同意書では進められません。家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てるか、明渡しの訴訟という流れになります。いずれも時間と費用がかかるため、入居の段階で備えておく意味がここにあります。
記録は後から効いてきます。何がどれだけ残っていたか、貴重品はあったか、いつ通知したかを残しておけば、争いになったときに説明できます。
貴重品や書類が出てきたとき
作業中に現金、通帳、印鑑、貴金属、権利証などが見つかることは珍しくありません。これらを他の家財と同じ扱いにするのは避けてください。
発見した時点で作業を止め、写真と目録に記録し、相続人へ連絡して引き渡します。現金や預貯金は相続財産そのものなので、大家や管理会社の判断で撤去費用に充当すると、後から精算を求められる余地を残します。
見落とされやすいのが、住所や氏名の分かる書類です。年賀状、手紙、保険証券、病院の診察券などは、相続人を探す手がかりになります。処分する前に確認しておくと、連絡先が分からない場合の調査に役立ちます。
デジタル機器も同様です。パソコンやスマートフォンには個人情報が残っています。処分する場合はデータの取り扱いを業者に確認してください。
撤去費用は誰が負担するか
原則は、残置物の所有者である退去者本人か、その相続人です。連帯保証人がいる場合、契約の内容によっては保証の範囲に含まれることがあります。
ただし、相続人が全員放棄した、連絡が取れない、資力がないといった事情で回収できず、結果として大家が負担することも実務では珍しくありません。金額の目安と負担の考え方は残置物撤去の費用と「誰が払う」で整理しています。
特殊清掃が必要になる場合
発見が遅れた場合、残置物の撤去だけでは部屋を貸せる状態に戻せないことがあります。臭気や汚損が建材まで及んでいると、通常の清掃では対応できません。
この場合の順序は、特殊清掃を先に行い、その後で残置物を搬出します。汚損した状態のまま家財を運び出すと、共用部や搬出経路に臭気が移り、他の入居者からの苦情につながることがあるためです。
床材の下や壁の内部まで及んでいる場合は、解体をともなう原状回復が必要になります。費用と期間が大きく変わるので、早い段階で現地を見てもらい、範囲を確定させるほうが結果的に安く収まります。
費用はどのくらいかかるか
金額は間取りと物量で大きく変わります。一般的な目安として、単身向けのワンルームで数万円から、家財の多い2LDK以上では数十万円になることもあります。実際の金額は現地の状況で変わるため、見積もりで確認してください。
費用を押し上げるのは主に次の要素です。
- 家財の量(トラック何台分か)
- エレベーターの有無と搬出経路(階段のみだと人員が増える)
- 家電4品目の有無(リサイクル料金が別途かかる)
- 特殊清掃の要否
- 作業日時の指定(即日・夜間・休日)
逆に、買取できる物があれば費用から差し引ける場合があります。詳しい相場と内訳は残置物撤去の費用と「誰が払う」で扱っています。
相続人が放棄した場合
相続人全員が相続放棄をすると、家財の引き取り手がいなくなります。ここで誤解されやすいのが、放棄すれば一切の関わりがなくなるという理解です。
民法940条は、放棄した人が放棄の時点でその財産を現に占有していた場合に、相続人または相続財産の清算人へ引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならないと定めています。2023年4月施行の改正で、義務を負うのが「放棄の時に現に占有している者」に限定されました。
同居していた家族が放棄した場合は保存義務が残ります。一方、離れて暮らしていた相続人でも、室内に自分の荷物を置いている場合や部屋の鍵を持っている場合は、占有者と判断される可能性があります。国土交通省と総務省の通知でも、占有者にあたるかは個別の事情ごとに判断が必要とされています。管理会社から鍵を預かっている相続人は、この点を確認しておいてください。
誰も占有しておらず引き取り手もいない状態が続く場合は、家庭裁判所へ相続財産清算人(2023年3月までは相続財産管理人と呼ばれていました)の選任を申し立てる流れになります。申立てには収入印紙と官報公告費用がかかり、相続財産に見合う費用が見込めない場合は予納金の納付を求められることがあります。
選任までの期間は事案によりますが、書類がそろっていれば数週間から数か月程度が目安です。明渡しや残置物の処理は、清算人が選任された後にその清算人と協議して進められます。清算そのものは、権利を主張すべき期間の公告が6か月を下回らないと定められている(民法952条2項)ため完了まで年単位を要することがありますが、待つ必要があるのは選任までです。
売買・解体のときの残置物
3つ目の場面にも触れておきます。不動産を売買するとき、売主が家財を残したまま引き渡そうとすることがあります。
原則は、引き渡しまでに売主が撤去します。ただし買主が「そのままでよい」と希望する場合もあり、その場合は売買契約書に残置物の扱いを明記します。何を残すのか、残した物の不具合について売主が責任を負うのかを書き分けておかないと、引き渡し後に話がこじれます。
相続した実家を売る場合、家財の量が多く撤去費用が数十万円規模になることがあります。売却前に見積もりを取り、費用を織り込んだうえで売り出し価格を決めるほうが、後から慌てずに済みます。
解体工事の場合も同様です。建物の解体費用と、室内の家財の処分費用は別に計算されます。解体業者が「残置物ありでいくら」と提示する場合、その内訳を確認してください。家庭から出る家財の処分には、解体工事の許可とは別に一般廃棄物の許可が関わります。
空き家に残された家財
持ち家を相続したものの住む予定がなく、家財がそのままになっているケースも増えています。賃貸と違って明け渡しの期限がないため、後回しになりやすい場面です。
ただし放置すると問題が出てきます。固定資産税は所有している限りかかり続けますし、管理が行き届かない状態が続けば行政の措置の対象になりえます。
空家等対策の推進に関する特別措置法は、市町村長が段階的に関与する仕組みを定めています。
| 段階 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 管理不全空家等への指導 | 放置すれば特定空家等になるおそれがある状態のとき、必要な措置をとるよう指導 | 13条1項 |
| 同・勧告 | 指導しても改善されないとき、具体的な措置を勧告 | 13条2項 |
| 特定空家等への助言・指導 | 倒壊のおそれ、著しく衛生上有害、著しく景観を損なうなどの状態 | 2条2項(定義)・22条1項 |
| 同・勧告 → 命令 → 代執行 | 改善されない場合に段階が進む | 22条2項・3項ほか |
税制上の影響が生じるのは、指定された時点ではなく勧告を受けた段階です。勧告を受けると、その敷地は固定資産税の住宅用地特例の対象から外れます。「特定空家等になったら税金が上がる」と説明されることがありますが、正確には勧告が分かれ目です。
家財が残ったままだと、売却も賃貸も進められません。相続人が複数いる場合、誰が片付けるかで話がまとまらず、年単位で止まることもあります。
進め方としては、相続人全員で方針(売る・貸す・解体する)を先に決め、そのうえで家財の整理に入るのが手戻りが少なくて済みます。形見分けの希望を先に聞いておくと、処分後の「あれはどうしたのか」を防げます。
なお同法14条は、空家等の適切な管理のために特に必要があるとき、市町村長が家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を請求できると定めています。相続人が判明しない空き家について、行政の側から手続きが動く場合があるということです。
残置物撤去と原状回復はどう違うか
残置物撤去としばしば混同されるのが原状回復です。重なる場面も多いものの、目的と作業範囲、そして根拠が異なります。
| 項目 | 残置物撤去 | 原状回復 |
|---|---|---|
| 目的 | 室内に残された動産を運び出し処分・保管する | 退去後の部屋を貸し出せる状態に戻す |
| 主な作業 | 家財の搬出・処分・買取・保管 | 清掃・補修・内装の修繕 |
| 論点 | 動産の所有権(誰の物か) | 損耗の区分(通常損耗か、借主の責任か) |
| 根拠 | 所有権に関する一般的なルール | 民法621条 |
原状回復について民法621条は、通常の使用による損耗と経年変化を除いた損傷について、賃借人が原状に復する義務を負うと定めています。つまり普通に住んでいて生じた劣化は、借主の負担ではありません。さらに、その損傷が借主の責任によらない事由で生じた場合も、原状回復の義務は生じないとされています。
一方、残置物の撤去は「借りた物を元に戻す」話ではなく「他人の物をどう扱うか」の話です。この違いを押さえておくと、費用の請求先や進め方の判断がしやすくなります。
孤独死など特殊清掃を要する現場では、特殊清掃から残置物撤去、原状回復までが一連で必要になります。
撤去を依頼するときに確認すること
残置物の撤去を業者に頼む場合、所有権の確認とは別に、その業者が必要な許可を持っているかを確かめてください。
家庭から出る不用品を業として回収・運搬するには、市町村長が出す一般廃棄物収集運搬業許可が必要です。産業廃棄物収集運搬業の許可や古物商許可だけでは、家庭ごみを回収できません。無許可の業者に頼むと、回収された物が不法投棄されるおそれがあります。
管理会社や大家が業務として委託する場合はさらに注意が要ります。事業者が一般廃棄物の運搬や処分を委託するときは許可業者へ委託する義務があり、違反すると委託した側も罰則の対象になります。
許可の種類と確認のしかたは遺品整理・不用品回収の許可で条文とあわせて整理しています。
見積もりを取る前に用意しておくもの
現地を見てもらう前に次が分かっていると、見積もりが早く正確になります。
| 項目 | なぜ必要か |
|---|---|
| 間取りと階数 | 物量の目安と搬出の手間が決まる |
| エレベーターの有無 | 人員と作業時間が変わる |
| 建物前の駐車スペース | トラックを付けられるかで作業効率が変わる |
| 残す物・処分する物の区別 | 仕分けの手間が減る。形見分けの希望も含めて |
| 作業希望日 | 繁忙期(3月・年末)は早めの相談が要る |
| 鍵の受け渡し方法 | 立ち会うか、鍵を預けるか |
写真を数枚撮って送れる場合は、現地を見る前におおよその範囲を伝えられます。遠方で立ち会えない場合も、写真と間取り図があれば概算を出せることが多いので、相談の段階で伝えてください。
残置物の処理を支える制度
単身高齢者の増加を背景に、残置物を円滑に処理するための制度整備が進んでいます。
国土交通省と法務省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しています。相続人の有無や所在が分からない単身者が亡くなると契約解除も残置物処理も進められない、という課題に対応するためのものです。賃貸借契約の解除を扱う解除関係事務委任契約と、居室内に残された動産の処理を扱う残置物関係事務委託契約の2つで構成されています(活用のためのガイドブックは令和7年10月時点で第2版が公表されています)。
さらに、2025年(令和7年)10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法により、居住支援法人の業務に残置物の処理が位置づけられました。入居者と居住支援法人があらかじめ取り決めをしておくことで、死亡後の残置物処理を進めやすくなります。
いずれも生前に結んでおく仕組みである点が要点です。すでに亡くなった後には使えないため、事後の対応は同意書を取り交わす流れになります。
制度の詳しい中身、受任者に誰を選ぶか、いつから処分できるかは残置物の処理等に関するモデル契約条項で扱っています。
似た言葉との違い
現場では近い意味の言葉が混在します。指すものが少しずつ違うので、整理しておきます。
| 言葉 | 指すもの | 残置物との違い |
|---|---|---|
| 遺品 | 亡くなった方が残した物全般 | 遺品のうち、賃貸の室内に残されたものが残置物と呼ばれる。遺品には形見や思い出の品という意味合いが含まれる |
| 不用品 | 持ち主が不要と判断した物 | 残置物は持ち主が不要と判断したとは限らない。所有者の意思が確認できていない点が違う |
| 粗大ごみ | 自治体が定める大きさ以上の家庭ごみ | 処理の区分を指す言葉。残置物のうち処分すると決まった物が粗大ごみになる |
| 動産 | 不動産以外の財産(法律用語) | 残置物は動産の一種。所有権を論じるときはこの言葉が使われる |
| 家財 | 家庭で使う道具・家具の総称 | ほぼ同じ物を指すが、残置物は「残されている」という状態を含む |
依頼や相談のとき、どの言葉を使うかで話が通じやすくなることがあります。管理会社や大家の立場なら「残置物の撤去」、遺族の立場なら「遺品整理」と伝えるのが一般的です。
場面別のまとめ
| 知りたいこと | 見るところ |
|---|---|
| 部屋のエアコンは設備か残置物か | 契約書・重要事項説明書の記載。この記事の「入居するときの残置物」 |
| 退去者が残した物を処分してよいか | 残置物処分の同意書 |
| 亡くなった入居者の家財をどうするか | 残置物処分の同意書(相続放棄との関係も) |
| 撤去費用は誰が払うか | 残置物撤去の費用と「誰が払う」 |
| 入居時に備える方法 | 残置物の処理等に関するモデル契約条項 |
| 業者に許可があるか確かめたい | 遺品整理・不用品回収の許可 |
残置物・特殊清掃でお困りの管理会社・大家の方へ
入居者の死亡や長期退去にともなう残置物の撤去は、所有権の確認や同意書の取り交わしなど、手順を誤れないポイントがあります。残置物撤去から特殊清掃、原状回復までをまとめてご相談いただけます。
作業前の写真記録や目録の作成、貴重品が出た場合の取り扱いといった実務面もあわせてご相談ください。同意の取り方や相続人への対応など法律上の判断については、弁護士・司法書士へご相談ください。ご相談は info@ihin-seiri-pro.jp までご連絡ください。
出典(8件)
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)第606条・第621条・第940条・第952条 e-Gov法令検索(2026-08-05確認)
- 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第349条の3の2第1項 e-Gov法令検索(2026-08-05確認。管理不全空家等・特定空家等とも「勧告」を要件として住宅用地特例の対象から除外)
- 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第10条 e-Gov法令検索(2026-08-05確認)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第6条の2第6項・第7条第1項・第25条 e-Gov法令検索(2026-08-05確認)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)第2条・第13条・第14条・第22条 e-Gov法令検索(2026-08-05確認)
- 国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000101.html(2026-08-05確認。解除関係事務委任契約・残置物関係事務委託契約の2契約構成、ガイドブック令和7年10月第2版)
- 国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk7_000054.html(2026-08-05確認。令和7年10月1日施行、居住支援法人の残置物処理等業務)
- 法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)の策定について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00262.html(2026-08-05確認)



