遺品整理や不用品回収を頼むとき、料金や口コミに目が向きがちですが、その前に確かめておきたいのが許可です。必要な許可を持たない業者に頼むと、回収された物が不法投棄されたり、後から高額を請求されたりするおそれがあります。
許可の有無は、業者の説明をうのみにせず、依頼する側が自分で確認できます。この記事では、遺品整理・不用品回収に必要な許可の種類と、無許可業者を見分ける確認のしかたを、法令の条文にもとづいて整理します。「罪に問われる可能性がある」という漠然とした説明ではなく、どの条文で何が禁じられ、いくらの罰則なのかまで押さえます。
資格である遺品整理士と、ここで扱う許可は別の仕組みです。両者の違いは遺品整理士とはで解説しています。
遺品整理では2種類の許可が同時に関わる
遺品整理が不用品回収と違うのは、同じ現場で「処分」と「買取」が同時に発生することです。捨てる物と売れる物が混ざっており、必要な許可も分かれます。
家財や生活用品の多くは、家庭から出る廃棄物、つまり一般廃棄物にあたります。これを業として回収・運搬するには、市町村長の許可が必要です。廃棄物処理法7条1項は次のように定めています。
一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
ただし書きの「専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみ」は、古紙や金属くずなど再生利用が確立した品目に限られます。家財一式の回収がこれにあたることはありません。「うちはリサイクル目的だから許可は不要」という説明が出たときは、この例外の話とすり替わっていないか確かめてください。
注意したいのは、この許可が区域ごとである点です。隣の市で許可を持っていても、物件のある市で許可がなければ、その市の家庭ごみは回収できません。全国対応をうたう業者に依頼するときほど、物件所在地の自治体の許可を確認する意味があります。
買取をともなう場合は、別に古物商許可が必要です。古物営業法3条により、都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません。
産廃許可・古物商許可では家庭ごみを回収できない
現場でよく見かける誤解がここです。「産業廃棄物収集運搬業許可あり」「古物商許可番号◯◯」と大きく掲げていても、それだけでは家庭から出る不用品を回収できません。
産業廃棄物は、事業活動にともなって生じた廃棄物のうち、燃え殻・汚泥・廃油・廃プラスチック類など政令で定められた種類に限られます(廃棄物処理法2条4項1号)。事業活動にともなって出た家財や生活用品は産業廃棄物ではなく、事業系一般廃棄物という区分になります。こちらも一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。 管理会社が「事業に伴うものだから産廃業者でよい」と考えるのは誤りになります。
古物商許可は中古品の売買のための許可で、廃棄物の回収を認めるものではありません。環境省も、家庭の廃棄物の回収には市区町村の一般廃棄物処理業許可や委託が必要であり、産業廃棄物処理業の許可や古物商の許可では回収できないと明確に案内しています。
「許可あり」という表示を見たときは、それが何の許可なのかまで確かめてください。
無許可営業の罰則は5年以下の拘禁刑か1000万円以下の罰金
多くの解説記事は「無許可営業は罪に問われる可能性がある」と書くにとどまりますが、条文には具体的な刑が定められています。廃棄物処理法25条1項の柱書きです。
次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
同項1号が、7条1項に違反して一般廃棄物の収集運搬を業として行った者、つまり無許可営業にあたります。「若しくは」「併科する」とあるとおり、拘禁刑と罰金の両方が科される場合もあります。
罰則の内容は次のとおりです。
| 行為 | 条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 無許可で一般廃棄物を業として収集運搬 | 廃棄物処理法25条1項1号 | 5年以下の拘禁刑 or 1000万円以下の罰金(併科あり) |
| 許可業者が自己の名義で他人にやらせる | 同25条1項7号(7条の5違反) | 同上 |
| 事業者が無許可業者へ委託する | 同25条1項6号(6条の2第6項違反) | 同上 |
| みだりに廃棄物を捨てる(不法投棄) | 同25条1項14号(16条違反) | 同上 |
| 許可業者が受けた仕事を他人へ委託する | 同26条1号(7条14項違反) | 3年以下の拘禁刑 or 300万円以下の罰金(併科あり) |
| 無許可で古物営業を営む | 古物営業法31条1号(3条違反) | 3年以下の拘禁刑 or 100万円以下の罰金 |
業者は法人であることが多いため、法人に科される額も押さえておきます。32条1項1号により、無許可営業(25条1項1号)と不法投棄(同14号)を法人の業務として行った場合、行為者を罰するほかに法人へ3億円以下の罰金が科されます。
なお「懲役」ではなく「拘禁刑」と書かれているのは、刑法改正により2025年6月から懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されたためです。古い解説では懲役と書かれていることがありますが、現行の条文は拘禁刑です。
なぜ許可を持つ業者が少ないのか
ここまで読んで、「許可が必要なら、なぜ無許可の業者がこれほど多いのか」と思われたかもしれません。背景には、この許可が簡単には下りない仕組みになっていることがあります。
廃棄物処理法7条5項は、市町村長が許可を出せる場合を限定しています。その1号がこれです。
当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること。
つまり、その市町村が自分たちで家庭ごみを収集・運搬できているなら、新たな許可を出す必要がないという建て付けです。家庭ごみの処理は市町村の責任とされているため、民間の許可は「市町村だけでは足りない部分を補う」位置づけになります。
さらに同項2号は、申請の内容がその市町村の一般廃棄物処理計画に適合することを求めています。計画に位置づけられていない業態には許可が出ません。
結果として、一般廃棄物収集運搬業の許可は新規発行が絞られており、地域によっては既存業者しか持っていないという状態が生まれます。遺品整理を手がける事業者が全国に増える一方で、許可の数はそれに追いついていません。
この差が、「提携」という表現や、許可の種類をぼかした表示が生まれる土壌になっています。業者側の事情としては理解できますが、依頼する側にとっては別の話です。 許可がなければ回収できないという法律の建て付けは変わりません。
許可には有効期間がある
もうひとつ知っておくとよいのが、この許可が更新制であることです。7条2項は「一年を下らない政令で定める期間ごとに」更新を受けなければ効力を失うと定めており、施行令4条の5がその期間を2年としています。
一度取得すれば永久に有効というものではないため、自治体の許可業者一覧は現在有効な業者を反映しています。過去に許可を持っていた業者が、更新せずに一覧から消えていることもあります。古い情報や業者側の掲示ではなく、自治体の最新の一覧で確認する意味はここにもあります。
「市の許可業者と提携しています」の正体
自社で一般廃棄物収集運搬業許可を持たない業者が、「市の許可業者と提携している」と説明することがあります。一見すると問題なさそうに聞こえますが、法律には次の規定があります。廃棄物処理法7条の5です。
(名義貸しの禁止)一般廃棄物収集運搬業者及び一般廃棄物処分業者は、自己の名義をもつて、他人に一般廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を業として行わせてはならない。
許可業者が名義だけ貸して、実際の回収を無許可の業者にやらせることは禁じられています。提携という言葉が、この名義貸しを言い換えたものである場合があります。
さらに、許可業者の側にも制限があります。7条14項です。
一般廃棄物収集運搬業者は、一般廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を、一般廃棄物処分業者は、一般廃棄物の処分を、それぞれ他人に委託してはならない。
許可業者が受けた仕事を他人へ委託することも禁じられています(26条1号・3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)。つまり、無許可業者が処分費込みで受注して許可業者に下請けさせる形は、受注した側が無許可営業、許可業者の側が委託禁止違反または名義貸しになりうる構造です。
では、どういう形なら適法なのか
横浜市は、遺品整理業者に依頼する場合の考え方をこう案内しています。
不用品を出す方と「一般廃棄物収集運搬業許可業者」が直接契約する必要があります(遺品整理業者にこの契約を委任することは可能です)
要点は、廃棄物の回収について、依頼者と許可業者が直接の契約当事者になることです。遺品整理業者はその契約の手配を代行できますが、自ら受注して下請けに流す形にはできません。
したがって、確認する内容は次のどちらかになります。
- 依頼しようとしている業者自身が、物件のある市区町村の許可を持っているか
- 持っていない場合、廃棄物の回収について依頼者と許可業者が直接契約する形になっているか
「提携しています」という説明だけで、契約の当事者が誰なのか分からない状態のまま進めないでください。
依頼した側に何が起きるか
「無許可業者に頼んだら、依頼者も罰せられるのか」という疑問をよく聞きます。ここは正確に区別しておきます。
ここは、依頼する人が個人か事業者かで結論が変わります。
家庭から不用品を出す個人については、無許可業者に依頼したこと自体を直接罰する規定は廃棄物処理法にありません。個人は、事業者の責務を定めた3条の対象でもありません。
一方、管理会社や大家が業務として残置物を処理する場合は事業者にあたり、事情が変わります。 6条の2第6項は、事業者が一般廃棄物の運搬や処分を他人に委託するときは、一般廃棄物収集運搬業者などに委託しなければならないと定めています。これに違反すると25条1項6号により、無許可営業と同じ5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金です。無許可業者に委託したこと自体が処罰の対象になります。
ただし、次の2点は押さえておく必要があります。
ひとつは、共犯として問われる可能性です。16条の投棄禁止は「何人も」が対象で業者に限られませんが、業者に引き渡す行為がそれ自体「捨てる」にあたるわけではありません。個人が問われうるのは、不法投棄されると分かったうえで依頼したような場合に、業者の違反への加担と評価されるときです。相場から外れた安さの理由を確かめずに依頼することが、常にそう評価されるわけではありません。
もうひとつは、罰則を受けなくても実害が生じることです。回収された家財が不法投棄され、そこに故人や依頼者の氏名・住所が分かる書類が混ざっていれば、投棄現場から連絡が来ることがあります。撤去や原状回復をめぐって話し合いになれば、その手間と費用は依頼者にかかってきます。無許可業者は連絡が取れなくなることも珍しくありません。
つまり、依頼者にとってのリスクは刑事罰よりも、後始末が自分に戻ってくることにあります。
許可を確かめる3つの手順
許可の有無は依頼前に確認できます。順番に見ていきます。
手順1 自治体の許可業者一覧で探す
多くの市区町村が、一般廃棄物収集運搬業の許可業者一覧をウェブサイトで公開しています。「◯◯市 一般廃棄物収集運搬 許可業者」で検索すると見つかります。ここに業者名があるかどうかが、最も確実な確認方法です。
見るのは物件のある市区町村の一覧です。許可は区域ごとなので、業者の本社所在地の自治体で確認しても意味がありません。
一覧が見つからないときは、自治体の廃棄物担当課(清掃課・環境課・resources課など名称はさまざま)に電話で尋ねるのが早道です。「一般廃棄物収集運搬業の許可業者を知りたい」と伝えれば案内してもらえます。特定の業者名を挙げて「この業者は許可を持っているか」と聞くこともできます。
なお、一覧に「粗大ごみ」「事業系ごみ」など複数の区分がある自治体もあります。遺品整理で必要なのは家庭から出る一般廃棄物の収集運搬なので、その区分を見てください。
手順2 許可番号を聞いて照合する
一覧に載っていない、あるいは社名が似ていて判別できない場合は、業者に許可番号を尋ねます。答えられない、あるいは産業廃棄物収集運搬業や古物商の番号を出してくる場合は、家庭ごみを扱う許可を持っていない可能性があります。
聞き方は「一般廃棄物収集運搬業の許可番号を教えてください」と特定して尋ねるのが確実です。単に「許可はありますか」と聞くと、別の許可の話が返ってくることがあります。
政令指定都市では、許可は市の単位で出されます。行政区ごとに分かれてはいないので、市の一覧を見れば足ります。
東京23区は事情が違います。特別区はそれぞれが地方公共団体で、許可を出すのは各区長です。物件のある区の一覧を見てください(申請の窓口は東京二十三区清掃協議会に共同化されています)。また特別区の許可は事業系の一般廃棄物が中心のため、家庭から出る不用品については、区の粗大ごみ受付センターや清掃事務所に処理方法を確認するのが早道です。
一部事務組合など複数市町村で処理を共同化している地域では、窓口が組合になっていることがあります。この場合も、まずは物件のある市区町村に問い合わせれば案内してもらえます。
手順3 買取があるなら古物商許可も確認する
買取をうたう業者には、古物商許可の番号を確認します。公安委員会が発行する12桁の番号で、「東京都公安委員会許可 第◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯号」のように表示されます。ウェブサイトに掲示している業者も多く、その場合は表示を確認すれば足ります。
買取をともなう場合は、古物商の許可を持つ信用できる業者に中古品としての買取りを依頼するよう、環境省も案内しています。
確認したい項目のまとめ
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 自治体の許可業者一覧 | 物件のある市区町村の一覧に業者名があるか |
| 一般廃棄物の許可番号 | 番号を提示できるか。産廃・古物商の番号とすり替わっていないか |
| 提携か自社許可か | 提携ではなく、その業者自身が許可を保有しているか |
| 古物商許可 | 買取をうたう場合、公安委員会の許可番号があるか |
| 家電4品目の扱い | エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機をどう処理するか説明できるか |
| 書面の交付 | 作業範囲・処分の流れ・料金の内訳を書面で示せるか |
では、どういう業者なら頼めるのか
許可が絞られているなら、遺品整理を頼める業者はどう見分ければよいのか。実務上は次の3つの形があります。
| 形 | 内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 自社で許可を持つ | その市区町村の一般廃棄物収集運搬業許可を保有 | 自治体の一覧に社名があるか |
| 許可業者と直接契約する | 廃棄物の回収は依頼者と許可業者が直接契約し、遺品整理業者は手配を代行する | 契約書の当事者が許可業者になっているか。処分費の請求元はどこか |
| 回収をともなわない | 仕分け・清掃・買取のみを行い、処分は依頼者が自治体のルートで行う | 作業範囲がどこまでか書面にあるか |
3つ目は見落とされがちですが、現実的な選択肢です。遺品整理のすべてを1社に任せる必要はありません。仕分けと清掃を業者に任せ、粗大ごみは自治体の収集を申し込む形にすれば、費用を抑えられることもあります。
問題になるのは、この3つのどれでもないのに「全部やります」と言う場合です。見積書に処分費が含まれているのに、その処分を誰が担うのか説明できないなら、そこで確認を止めてください。
家電4品目は別のルートになる
遺品整理では、冷蔵庫や洗濯機、テレビ、エアコンがほぼ必ず出ます。この4品目は一般ごみとして処理できません。
家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)の施行令1条が対象を定めており、次のものが該当します。
- ユニット形エアコンディショナー(窓用、壁掛け・床置きの室内機を持つセパレート形)
- テレビ(ブラウン管式、液晶・有機EL式、プラズマ式)
- 電気冷蔵庫・電気冷凍庫
- 電気洗濯機・衣類乾燥機
これらは法律で定められたルートで処理する必要があります。実際に使えるのは次の経路です。
- 購入した小売業者が分かる場合、その店へ引き取りを依頼する
- 買い替えの場合、新しい製品を買う店へ引き取りを依頼する
- 購入店が分からない場合、市区町村の受付窓口に相談する
- 家電リサイクル券を郵便局で購入し、指定引取場所へ自分で持ち込む
遺品整理では購入店が分からないことが多く、小売業者のルートを使えない場面が少なくありません。市区町村の窓口を持つ自治体が多いので、そちらを確認してください。
回収を請け負う業者には、このルートに対応できる体制が要ります。
見積もりの段階で、家電4品目をどう処理するのかを説明できるかを確かめてください。リサイクル料金と収集運搬料金の内訳を示せる業者であれば、正規のルートを通していると考えられます。逆に、家電も含めて一律の定額で「全部まとめて処分します」と説明する業者は、処理経路を確認したほうが安全です。
見積もりのときに聞くこと
ここまでの内容を、実際の見積もりの場で使える質問に落とします。答え方で、その業者の体制が見えてきます。
| 質問 | 期待される答え | 注意したい答え |
|---|---|---|
| この物件の市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可番号を教えてください | 自社の番号を即答する。持たない場合は、依頼者と許可業者が直接契約する形にできると説明する | 「提携しているので大丈夫です」「産廃の許可があります」 |
| 廃棄物の回収は誰と誰の契約になりますか | 契約の当事者を明確に答える | 質問の意味をはぐらかす |
| 回収した物はどこへ運びますか | 処理施設名や搬入先を答えられる | 「こちらで適切に処理します」だけ |
| 冷蔵庫とテレビはどう処理しますか | 家電リサイクル券の話が出る、料金の内訳を示す | 「まとめて処分します」で終わる |
| 買取があるなら古物商の許可番号は | 公安委員会の番号を示す | 買取をうたうのに答えられない |
| 見積書に作業範囲と処分の流れを書けますか | 書面で出せる | 口頭のみ、当日に金額が変わる |
答えをはぐらかされた時点で候補から外して構いません。 許可を持つ業者にとって、番号を答えることは特別なことではないからです。
遺品整理士の資格とは別の話
見積もりの場で「遺品整理士が在籍しています」と説明されることがあります。これは民間団体の認定資格で、遺品の取り扱いや関連法令についての知識を学んだことを示すものです。
有資格者がいることは、故人の物を丁寧に扱う姿勢の目安にはなります。ただし資格と許可は別の仕組みで、遺品整理士の資格があっても家庭ごみを回収できるようにはなりません。 資格の説明で許可の話が置き換わっていないかは、意識して聞き分けてください。
資格の詳しい内容は遺品整理士とはで扱っています。
無料回収・巡回トラック・チラシ
「無料回収」をうたって街を巡回するトラック、ポストに入るチラシ、空き地での回収には、とくに注意が必要です。
無料をうたいながらトラックに積んだ後で高額を請求する、回収した物を山林などに不法投棄する。こうした事例が消費生活の相談窓口に寄せられています。環境省も、市区町村の許可を確認できない回収業者を利用しないよう呼びかけています。
考えてみると、回収した物を適正に処理するには費用がかかります。それを無料でできるのは、売れる物だけを選んで持ち去るか、処理費用をかけずに捨てているかのどちらかです。前者であれば古物商許可が、後者であれば処理の正当性が問われます。
遺品整理では、故人の書類や写真、住所の分かる郵便物が家財に混ざります。それが不法投棄されたときの影響は、家財を失うことにとどまりません。
引越し業者や便利屋に頼む場合
遺品整理の相談先は専門業者だけではありません。引越しにあわせて片付ける、便利屋に頼む、不動産会社に紹介してもらう。いずれの場合も、家庭ごみを回収する部分については同じ許可が必要です。
引越し業者が持っているのは、貨物自動車運送事業の許可です。荷物を運ぶための許可であって、廃棄物を回収するための許可ではありません。引越しの際に出た不用品を運び出す場合、その部分には一般廃棄物収集運搬業許可が必要になります。大手の引越し業者が「不用品は自治体の収集をご利用ください」と案内するのは、この区別によるものです。
便利屋についても同じです。作業を請け負うこと自体に許可は要りませんが、家庭ごみの回収・運搬を業として行うなら許可が必要です。
不動産会社や管理会社からの紹介であっても、紹介された業者自身の許可を確認する点は変わりません。紹介は品質の保証ではないので、遠慮せず番号を尋ねてください。
すでに頼んでしまった場合
読んでいるうちに「先週頼んだ業者はどうだったのか」と気になった方もいるかもしれません。作業が終わった後にできることを整理します。
まず、許可の有無を後から確認することはできます。自治体の許可業者一覧に社名があるかを見れば足ります。載っていない場合でも、依頼者と許可業者が直接契約する形になっていた可能性はあるので、その一点だけで違法と決めつける必要はありません。契約書や領収書の発行元が許可業者になっていれば、その形だったと考えられます。
心配なのは、回収された物が適正に処理されたかどうかです。次のものが手元にあれば、後から確認する材料になります。
- 契約書・見積書・領収書(社名、所在地、連絡先が記載されているか)
- 作業前後の写真
- 搬出した物のおおよその内容が分かるもの
連絡が取れる状態なら、処理先を尋ねてみてください。答えられるなら大きな問題にはなりにくいといえます。連絡が取れない、住所や電話が実在しない、といった場合は、お住まいの自治体の廃棄物担当課か消費生活センターに相談してください。同じ業者について既に情報が集まっていることもあります。
高額請求を受けた、いったん支払ったが納得していない、といった金銭のトラブルは消費生活センター(消費者ホットライン188)が窓口になります。
相見積もりを取るときの注意
複数社から見積もりを取ると、金額に大きな差が出ることがあります。同じ物量なのに一方が極端に安い場合、その差がどこから来ているかを考えてください。
処分費は、量と品目でおおよそ決まります。運搬の人件費と車両費、処理施設への持ち込み費用、家電4品目のリサイクル料金。これらを積み上げれば、極端に安くはなりません。安さの理由が「買取で相殺している」なら古物商許可があるはずですし、「自社で処理施設を持っている」なら施設名を答えられるはずです。
どちらの説明もないまま金額だけが安い場合は、処理費を負担していない可能性を疑う理由になります。見積書の内訳を出せるかどうかは、そのまま体制の確認になります。
費用の考え方は遺品整理の費用相場、追加料金が発生する場面は追加料金が出るケースで扱っています。
賃貸物件の残置物を処理する場合
管理会社や大家が入居者の残置物を処理する場合も、必要な許可は同じです。加えて、残置物には所有者がいるという別の論点が重なります。
所有者の同意なく処分すると、許可の有無とは別に損害賠償の問題が生じます。同意の取り方と書面の作り方は残置物処分の同意書で、入居時に備える方法は残置物の処理等に関するモデル契約条項で扱っています。
許可の確認と所有権の確認は、どちらも省略できません。
遺品整理・残置物の対応でお困りの方へ
遺品整理や賃貸での残置物の撤去は、許可の有無や契約のかたちなど、依頼前に確かめておきたい点があります。お見積もりの際は、必要な許可と処分の経路、料金の内訳をご説明します。
業者選びの基準は遺品整理業者の選び方、費用の目安は遺品整理の費用相場で整理しています。ご相談は info@ihin-seiri-pro.jp までご連絡ください。
出典(8件)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第3条・第7条・第7条の5・第16条・第25条 e-Gov法令検索(2026-08-05確認)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号)第4条 e-Gov法令検索(2026-08-05確認。市町村が委託する場合の基準)
- 古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第3条・第31条 e-Gov法令検索(2026-08-05確認)
- 特定家庭用機器再商品化法施行令(平成十年政令第三百七十八号)第1条 e-Gov法令検索(2026-08-05確認。家電リサイクル法の対象4品目)
- 横浜市「遺品整理や家の片付けを業者に依頼する際の注意点」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/gomi-recycle/chui/ihinkaisyuu_tyuui.html(2026-08-05確認。不用品を出す方と許可業者が直接契約する必要があること)
- 国民生活センター「遺品整理サービスでの契約トラブル」 https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20180719_1.pdf(2026-08-05確認。無許可・無料回収をめぐるトラブル類型)
- 環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」 https://www.env.go.jp/recycle/kaden/tv-recycle/qa.html(2026-08-05確認)
- 警察庁「古物営業・質屋営業について」 https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/kobutsu/index.html(2026-08-05確認)
